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[コメント] イノセント(1975/伊)

この時、監督は酸素吸入器が必要なほど衰弱していたそうだが、とてもそうとは思えない演出、演技采配、カメラ、画面構成。むしろ若返っているのでは?と思えるほどふてぶてしい魅力がある。
ジョー・チップ

**ネタバレ注意**
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旧態依然とした貴族社会を軽蔑し、俺は新世界の人間だ、お前ら俺にひれ伏せ、と内心思っているトゥリオ。その証明として、妻にもオープンに愛人と付合っていても平然としている。自由とか、平等(「フリーセックス」ということか?)を唱えるブルジョア社会の暗喩と思える。 なんとかその関係はうまくいきそうだったが、妻の逆襲(と、いうかトォリオと同じことをしたまでだが)に遭う。もしも彼が本当に「新しい人間」だったならば、妻の妊娠を笑って許せただろう。だがそんな覚悟のある人間はそうはいない。彼の野望(?)は嫉妬という根源的な感情によって自ら潰え去った。口先だけの思想、机上の空論だった。このあたり、「貴族はダメだけど、ブルジョアはもっとダメだろ。」という監督の持論を最後まで唱え続けたといえる。だからと言って妻が共産主義者だったわけではない。人間としての覚悟という点で妻の方が彼を上回っていたということだろう。 銃声からぶざまに倒れた男、さっさと立ち去る愛人、までの無駄のない演出ぶりと登場人物に対する突き放し方がすごい。映画史に残るラストシーンだと思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)草月 TOMIMORI[*] 町田[*] イライザー7 ゑぎ[*]

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