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[コメント] ラスト サムライ(2003/米=ニュージーランド=日)

図らずも『マーシャル・ロー』で9・11を予言してしまったズウィック監督が責任を感じて(?)9・11後の現状批判と今後の国家の有り様を提言しようとした・・・考え過ぎだな、やはり。
ジョー・チップ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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しかしアメリカはもっと他国の文化を尊重しなさい!日本はもっと自国の文化に自信を持って!と言ってるように見えるが。                                      映画の中で、アルグレンは「カスター将軍は下司野郎だった。」という。この時私の頭に浮かんだのは、『小さな巨人』の下司なカスター将軍だった。その繋がりで観ていたら、この映画も『小さな巨人』に似ていると思った。『小さな巨人』はダスティン・ホフマンの主人公はネイティブアメリカンの集落と白人の社会を行ったりするが、この映画も主人公はアメリカ社会から日本の上流社会、サムライ村との間を往復する。『ダンス・ウィズ・ウルブス』のようにあちらへ行きっぱなしとか、『ブラックレイン』のように日本でアメリカ人が先導して捜査をするということでもない。                                       このような手法で、戦争に対するアメリカ人の無関心ぶり(冒頭、南北戦争の武勇談を聞きにアルグレンを待つ群衆、彼らが聴きたいのは勇ましいかっこいい話であり、見たいのは現実の戦場ではなく戦争のジオラマなのである)、サムライの気高さ(この点はもう説明するまでもないだろう)、日本のいびつな西欧化(大村が一人で体現、これはちょっとどうかと思う)、アルグレンの孤独(大佐に〈なぜ自国の人間を憎むんだ?〉と問われて無言で「侍」と書かれた紙を眺め、懐に入れるアルグレン、いいシーンだ)などの事象がお互いに主張し合い、問題が浮き彫りになっていく。                                      確かにこの映画はフィクションであり、突っ込めばいくらでもおかしな点(まあ、ぶっちゃけ日本人の大部分は武士階級じゃないよな)があるが、時代の変転に飲みこまれる人々、マイノリティによる異議申立てを描いて剣戟の醍醐味だけでなく、骨太な歴史絵巻を映画で久々に見た思いがする。                                      なぜ明治天皇まで担ぎ出すのだろう、話が大きくなりすぎでは、と思ってみていると最後に天皇に見せ場が。アルグレン経由でサムライ魂を注入された天皇は弱気な態度を一変、アメリカ人の特使に「アンタらとの契約はやっぱりナシ!」と突っぱねてしまう。スゴスゴと退場するアメリカ人。これを見てスカっとしたのは私だけか。もっともここまで関わってしまっては、むしろアルグレンは日本に留まるべきではなかったと思う。帰ってサムライ魂を母国で広める運動でもして欲しかったね。

(評価:★4)

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