[コメント] レイクサイドマーダーケース(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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東野圭吾の映画化作品としては3作目。この作品は『g@me』のように原作にあまり脚色をしていない。まず気付くのは並木夫妻の子供が男の子ではなく女の子であるということか。これは理由が全く分からず。原作のとおり、のちに重要な意味を持つ子供は俊介と同姓の男の子のほうが良かったのかも…とも思ってしまった…。また、目立つのは脚色とはまるで反対の消却がとても多いということ。かなり省かれているエピソードが多い。原作には並木、藤間、関谷夫妻の他に坂崎という夫妻が登場していたりするくらいだ。
それでも劇中は見入ってしまう。普通の夫婦が湖畔の別荘に集まり、ある殺人をきっかけに共同して隠蔽工作を行っていく。俊介と美菜子の関係だったり何かを企んでいそうな藤間の存在だったりと、注目すべき点は多い。隠蔽工作に関していえば死体の顔・指紋・歯型を残すまいとする作業はなかなか見ごたえがあったし、こっちまで顔を覆いたくなるような場面だった(カツーン!カツーン!という音がね…)。
それでも、どうもしっくりこないのはオチのインパクトに欠けるからだ。まず俊介が疑いを持ち始めてからそれをまず津久見に告げるまでのくだりが不自然すぎる。俊介は事件の冒頭か何かに疑念を抱いているとは到底思えなかった。しかも疑念を抱いてもそれには裏付けが必要で、あんな状態でしかも憶測でなんでもかんでも捲くし立てる俊介が少々痛々しい。その点では原作はしっかりと細部まで描かれている。その後、食後の面接練習で俊介はとうとう皆に打ち明けるのだが、同様にそれまでのくだりが不自然だ。裏付け(鑑賞者への意識付け)が薄っぺらいままだから説得力が欠けるのは当たり前。しかもそこで「もう諦めよう」という姿勢になってしまう藤間も不自然(そりゃ原作だってここで諦める訳だが)。
子供の存在も、もっと生かして欲しかったところ。プレッシャーを感じるというよりも、両親との距離感を感じずにはいられないという孤独な姿があまり見受けられず。ここからは原作を未読の人もいると思うのであまり追求はしませんが、ラストのリビングでの俊介と美菜子のシーンこそが本当の消化不良。子供の問題というよりも、まずは俺達の問題だ…という姿勢が気に食わん。自分達だけで片付けるなよと思う。原作は違うので読んで頂きたいのですが、「俺達の子供が犯人なら……この先どうやって生きていくべきか」が前提に描かれている。映画と原作では余韻が全く違う作品だった。
まぁフジテレビ製作にしては低予算(ギャランティは発生していそうだけど)な雰囲気がとても良かったと思う。特撮よりネタ勝負!というスタンスも伝わってくる。出演者も役所をはじめ、それぞれの味を発揮していたと思う。杉田のおばさんの母親姿も見ることができたし(笑)。ジャパニーズホラーを意識している感を否めなくも無いけど、それはご愛嬌ってことで見逃しておこう…
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