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[コメント] 北京ヴァイオリン(2002/中国=韓国)

チュンにないものをあの女の子は持っていた。それも才能のうちのひとつ。しかも、それは、音楽とともに生きていこうとする人生に、必ずしも必要なものではない。
kazby

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







チアン先生のような人を知っているという人は多いと思う。あたしもよく似た人を知ってる。だけど、理屈っぽく、小賢しいユイ先生のような人は、初めて。つまり、彼は「成功請負人」。成功に関する彼なりの哲学を持っている人でもあった。そして彼は、田舎の天才少年を上手く(いや、下手をすると潰していたかもしれない)使って、世界へ羽ばたく金の卵を世に送り出すことに成功した。

チュンはいつのまにかそのことに気が付いていたのかもしれない。「君が選ばれればいいと思ってた。」これは彼の本心だと思う。「選ばれないことがわかって、自分がどんなに音楽を愛しているか分かったの」この気持ちがあの女の子の中から染み出してくるのをユイ先生は待っていた。なにがなんでも一番になろうとするガッツは、この世界で成功しようと思ったら、多分必要不可欠なもの。でも、それだけじゃだめなんだ。

「前ほど弾けなくなった。」とつぶやくチュンに、すかさず、父親とチュンの秘密を話して、ポーンとサイコロを投げたユイ先生。最後の、選抜大会へ出場する人間が入れ替わる部分は、ユイ先生にだって予測できてたかどうか。

息詰まるような展開から、一気にラストシーンへむかって走り出すチュンが、ほんとにかっこよかった。あたし、映画を観て久々に泣いた。ラストの揺さぶりが、こんなに心地いいと思ったのは久しぶり。この人の人生はいつも美しい音楽とともにあるんだろうな、仕事でくたびれた父さんを癒し、恋に疲れた女友達を慰め、人生に疲れた音楽教師を元気付けるバイオリンを奏でるんだろうなって、心から思えた。

(評価:★5)

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