まず冒頭の木登りのシーンは圧巻。あれは登る華麗さよりも落ちるほうが、「おいしい」。それを知ってか、皆どこか先を争うように落ちる。

ブルース・リーから「それ」を受け継いだジャッキー・チェンは、今ではもうワイヤーアクションのお世話になるようになってしまった。しかしそんなジャッキーを誰が責めようか。もう充分すぎるくらいに、飛び乗り、そして飛び降り、ぶら下がり、引きずられ、そして落ちる。ありとあらゆるアクションをやり尽くしたじゃないか。先駆者ブルース・リーが急逝したからこそ、ジャッキーはとにかく「それ」をやり続け、そして文字通り命がけで「それ」を守り続けてきた。

そしてタイのこ汚い映画館で、ジャッキーから「それ」を受け継いだ少年が 三代目後継者として名乗りをあげたのだ。「それ」とは、大昔のハリウッド映画には確かに存在したもの。そして現在では完全に死滅したもの。「命がけの生身のアクションが伝える興奮」である。

脚本はお粗末。カメラワークはまあまあ。そして紙より軽い演者の命。（だってあれ本当に殴ってるじゃん） アクション映画の王道だが、ハリウッドは無視するだろう。それでもいい。ジャッキーはきっと遠い昔を思い出しながら、動かなくなった体と変わらぬ熱意でもって嫉妬するだろう。

さあトニー。スタントマンの仕事が多いようだけど、次はどんなのを作る？