[コメント] グリーンブック(2018/米)
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まあ案外正解ではあるが、差別描写はこっちの方が比較的エグい。エグいんだけど、なんか安心して観ていられたのはドクがいわゆるステレオタイプな「差別されて気の毒な善良なる黒人」ではなく、どこまでも「上品」かつ「知的」な堂々とした紳士として描写されてたからだと思う。
声を荒げることなど(ほとんど)なく、ただ冷静に論理的に抗議するその誇り高い姿は感銘に値するが、同時に高水準の教育を受けた少数派の黒人なのだと感じてしまう。もちろんそれが悪いことではないんだけど。
トニーがドクを受け入れたのはどの場面かなあって振り返ると、僕はドクの性癖がバレてしまったときだと思う。性癖というのは男なら誰でもそうだが、たとえ同性であっても、いや同性だからこそ面と向かってつまびらかにはしたくないものだ。なのに第三者の介入というもっとも不名誉な形で使用人に知れてしまった。その傷ついた自尊心と誇りをトニーは痛いほどわかったのだ。黒人とか白人ではなく男同士として。だから「よくあることさ」とさらっと流す。 また、旅の途中でばったり会った古い友人にイタリア語で心ない内緒話をされるトニー。そして実はイタリア語も堪能だったドクが、おごそかに給与のアップを提示したのは「行かないでくれ」の意思表示なのをトニーはちゃんと理解した。だから「断りに行くんだってば」と安心させてやるこの描写が僕は大好きだ。
『ドライビング・ミス・デイジー』みたいな作品なんだろうなって思ってる人へ。確かにそんな感じの映画だし、ラストもそんな感じ。だからあなたがもしもミスデイジーとホークのような心温まるほっこりしたラストを期待しているなら是非これを観るべき。
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