コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ジョゼと虎と魚たち(2003/日)

きれい事も、嘘も。何一つなくて。おとぎ話も虚構も入る隙間なんてなくて。全部本当なんだと思った。脆く、輝いたのが一瞬だったとしても、その一瞬が輝いた時の大切さと愛しさを思う。いい映画だ。
ムク

きれい事も、嘘も。何一つなくて。 おとぎ話も虚構も入る隙間なんてなくて。 全部本当なんだと思った。

ジョゼの深いところには覆しようのない諦観がある。 それでも強く、強がりもし、たまに素直な本音を覗かせ、ユーモアも持ち合せている。 彼女は、可哀想だと簡単に言ってしまえるような、安易な同情を寄せ付けない……だからだろうか。 後を引く話なのに、決して嫌ではない。 寧ろ自分の中の大切な思い出のひとつのように思い出せる。

ジョゼの思いやりの深さや、さり気ない気の使い方や、見逃してしまいそうなちょっとした可愛らしさが愛おしい。 煮物をお箸で一つ、差し出すシーンが一番すき。 甘酸っぱさが胸に刺さる。

恒夫の人にも自分にも正直で、その思うままに動いて、健やかなところ。 残酷で、ある意味とても誠実だ。 誠実で正直でいるからこそ、痛みが残る。 愛しさが棘のように残る。 男の人の方が辛い映画かもしれない。

全部が熔けこんでひとつになっていた。 登場人物も皆息づき、映像も、声も、音楽も、どれ一つとっても余分でも足りなくもなかった。 音楽を担当したくるりはやっぱりよかった。 エンドロールの中流れた音楽まで、物語から切り離されていない。 あまりに自然に存在する音に不思議な感じすらした。

とても残る映画だ。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (12 人)pinkmoon[*] 林田乃丞[*] ホッチkiss[*] わわ[*] sawa:38[*] あき♪[*] ぽんしゅう[*] なつめ[*] 水那岐[*] スパルタのキツネ[*] けにろん[*] 緑雨[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。