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[コメント] 夜と霧(1955/仏)

電流が流れ尽くされた有刺鉄線、血が流れ尽くされた数多くの魂が眠る荒れた大地の収容所。心が嘔吐してしまう映像の連続に惨さが心に染みいる。戦争で産み出される犠牲者の数は今もなお増え続け、残された人々を苦しめる。
ジャイアント白田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「これは人間のしたことではない」と言っても始まらないし、「こんなこと自分はできないし、しない」と言って逃げることは出来ない。

一説ではあるが、戦勝国側による脚色が多くに施されている映像だとは言われている。が、その脚色が有ろうが無かろうが、これが人間のした鬼畜の所行だということは変わり無く、直視しなければならない映像を素直に受け入れたい。

30分の貴重な映像、多くの犠牲者によって生まれた映像を、私はある国の、ある時期における特別な話と言い聞かせ、消えやらぬ悲鳴に耳を貸さぬ人間にはならないし、なる気になどない。絶対に忘れては駄目な戦争の本質の一面がここにあったのだから。

貨物列車がユダヤ人と、手違いでリストに載ったユダヤ人以外の一部の人を強制収容所に運び、強制労働。彼らは衛生上の名目で裸にさせられ、丸坊主にさせられ、入れ墨をさせられ、青島の服を着せられて“夜”と“霧”に分類され管理され、1942年にヒスラーの「生産的に処分しろ」で生産性を向上させた火葬場、ガス室などで殺された。

大量の木と大量の死体で組まれた野外火葬によって黒焦げになった人々の姿を、人間のままに開放してあげられなかった人類がしてしまった「生死に無関心」が繰り返さないことを我々はこの映像からもしっかりと学び取っていかなければならないだろう。

死者に安らぎを。大地に平和を、そして愛を。

2003/5/25

(評価:★3)

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