[コメント] 007/カジノロワイヤル(1967/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まずはクーリングダウンがてらに一言。「マタハリとジェームズボンドの私生児マタボンドが出てきたと思ったら、ベタベタな特撮。UFOにマタボンドが誘拐されるなどの迷シーンの数々が魅力のこのドラッグ映画に光を!」
…思うに、見る人が、いかにして脳筋の細胞をフルにして天才のスタートダッシュに付いてこられるかが、この映画の感想を「偉大」「駄作」に分けるのだろう。スタートダッシュで、見ず知らずの怪しげ天才オッサンの世界に付いていった私は幸せ。
出だしからCIAとKGBとMI6とフランス情報部が出現し度肝を抜いたが、それはこの映画のウエートから見ると序の口の挨拶代わりの名刺だった…。マクタリー城で出るわ出るわの美女軍団&意味不明の力比べと意味不明のボタン投げ。始まってまだしのこの時点でラストに多大な期待を寄せ、画面に見入った。で、テレンス・クーパーが『対テロ』ならぬ『対女美人スパイ訓練』が出た瞬間、一瞬意識が飛んだ(だってメッチャ美人を次々に投げ飛ばすんだもんなぁ)。しかし、これさえも何でもアリの展開に拍車がかかる前の静けさに過ぎなかったのだ。
中盤以降、さらに加速が増し続ける。『西欧のカトちゃんケンちゃん』ことウディアレン、ストレンジラブなピータセラーズの登場で、風刺&ユーモアに勢いがまし、オーソンウェルズは厚化粧で飲み屋のネエチャンの口説くかのようなマジックを連発でハチャメチャ度アップ(死語)!!
「一体この映画は何なんだ?」と思わせるまもなく間髪入れず次へと進み、ル・シッフル(オーソンウェルズ)に捕まったイヴリン・トレンブル(ピータセラーズ)が拷問されるシーンが現れる。このシーン、実はこの作品の道筋をつけているのだ。つまりドラックムービーに変化していく、後半の天才達の化学反応パレードムービーの予防接種的役割を果たしているのだった。
ラスト、ジミーボンド(ウディアレン)が実は悪の変態親玉(『博士の異常な愛情〜』のストレンジラブ博士をパロッたウディアレンにフィットした凄いキャラ)ドクターノアだと判明し、最終決戦に向かうのだが、もう対決が健全すぎる笑いのスプラッターホラー映画に仕上がっているのだ!
有史以来、天才達の演技の化かし合いの終了が惜しいと思う気持ちにさせてくれる映画が果たしてあっただろうか? この映画は、有史に働きかけてくる、ブッ飛んだ凡人の発想を超越した発想がいかに魅力的かを再認識させてくれた名作だと言えるのではないだろうか。そして天才達はさりげに、ラストに笑気ガスが充満する建物内で行われる戦争を、冷戦になぞらえて構成しているので、天才の表現意欲は底なしだと感じた。
制作費(主に出演料)が膨れあがって映画会社は救えないだろうが、このメンバーなら笑いと映画で世界を救ちゃいそうと、見ていて何度か思った。マジ凄い、この映画このメンバー、そして5人の監督。
2002/10/10
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