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[コメント] Focus(1996/日)

似非ドキュメンタリーな風味の完璧なフィクションなのだけれど[映像]が救いようのない絶望的な低次元の嘘を語っていないのが良い。さらに一人称視点がプラスに作用していて全国9000万人の浅野ファンを浅野ヲタにするかもしれない問題作。
ジャイアント白田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







___《見えた「美」》______________

衝撃的に映像から出る美しさの光が脳裏に焼き付く。映画はこうであるべき、という固定観念色眼鏡を外さないとその美しさは見ることは出来ない。私は危ない目のした情操教育が施されていない時代が大量生産した今時の寵児と、それを造り出した気狂いエゴ博士達を余すところ無く赤裸々に描いたところに美しさを感じた。

その感じた「美しさ」を上手く言葉で説明出来ないのだが、私はですが[人間の本質]は美しいモノだと思っているのと、[人間の本質]がもっとも鮮明に見える時は肉体と心が壊れた時だと思っているんです。

「壊れた」と言っても厚い化粧で隠されていた本質が表面に現れたことなのですけど、そのスッピンは本来綺麗で美しいんですよ。今現在、厚化粧をし続けたために醜すぎる事件が続発しているように、化粧を毎日毎日毎朝毎朝ベルトコンベアに乗せられた顔にし続け肌がボロボロになり、化けの皮が剥がれていく過程というのは酷く醜い。

作中のキレる青年のようにエゴ博士達に弄られまくりながらも自分は良識ある人間だという厚化粧な考えを抱き続ける行為もスゴク醜い。ホント醜かった。が、しかし恐らく青年は弄られて我慢している原因の自分の化粧の存在に気づき自分から落としたのだ。そう、その潔い人間的本能の狂気に満ちたブチギレ方が綺麗なのだ美しいのだ。潔いキレの美しさと人間の本質の美しさの二つはは相乗効果をもたらして今までにない美しさがそこに見えた。(私だけかもしれないけれど)

ま、彼は自分だけの世界の流心に暮らしていた為に、リアル社会におけるトレンドである長い物に巻かれろ精神が欠落した脱常識人だったのが幸いしてキレたのだろう。この話で青年が一番人間らしかったと言える。(単に、子供の大人に対しての不満の表現の仕方をドラえもんのビックライトで照らしデフォルメして映像化したと言えなくもない)

___《感じた不快感》______________

全編を通じ、ただただ不快感を感じ続けた人もいるだろうが、その[不快感]は世の中不快感の飽和状態だという事を無意識に避けて通ってきた人間の[浅ましさ]ではないだろうか。綺麗に早く答えが出る公式だけを覚えて効率的に合理的に世の中の全ての事象を動かそう思っても、世の中そうは上手く事が進んでいかないもの。所詮この世は[本質]をなおざりにして進んで結末は作中同様、下の者が消えていく事と言う事なのか。私は世の中の仕組みに不快感をこの作品のラストから好き勝手に感じ取る事が出来た。

2002/8/28

(評価:★5)

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