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[コメント] 青べか物語(1962/日)

何かもうひと伸びが絶対的に足りないし、後半は失速に向かって突き進むのだが、その失速を埋め立て事業等とし、それに呑み込まれる浦粕の住民を現す手法だと解釈すると、じんわりと骨身に染み入る感情がある。干潟が海の下に潜り込むように、人の思い出が海の底にアスファルトの板の下に潜り込む。
ジャイアント白田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







悲喜劇の中の沢山の主人公の姿が醜悪美よろしく活写されていた。

どん底』を思い出させてくれた。その作品に登場した名曲には及ばないが、しっかりと情緒のある音楽もあり、そこの土地ならではの淫靡、猥雑極まりない光景が広がる。一連を絡めたテンポ、展開は『どん底』のリメイクかと思うほど。

人間の数だけドラマがあり、街の数だけドラマが産まれ、消える土地の大きさだけ多くのドラマが消え去る。そして、その上に新たに作られたアスファルト上で作られた舞台から産まれたドラマに私たちがいるのだとすると、皆が一斉にライフスタイルの先祖帰りをすると行き着く先が大きな齟齬無くココに表現されたところに寄せられるのだ。そして「汚い」と心の其処から映画の登場人物に言えないこの感覚は、自分との境の薄さをリアルに感じ取っているに過ぎないのであり、憧れを抱いている我々の身勝手な無意識のなせる技の一つだ。

人とは汚いのだ。汚いの再発見の旅として記憶し美とはなにかを考えたい。

2003/8/11

(評価:★3)

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