[コメント] ベティ・サイズモア(2000/米)
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夫の残酷な殺され方を目の当たりにしてしまったので、脳が瞬時に彼女を夢の世界へと非難させるといった、さりげなく医学的見地から食い込んできた始まり方。昼ドラ世界=現実世界となってカンザスを旅発ちデイビッドに会いに行こうとするベティサイズモアが、夫の不始末で親子の殺し屋と出会い&引退に立ち会い、男性田舎記者と男運ゼロの女が結婚。そしてマンネリだった昼ドラのカンフル剤として、正式にベティサイズモア昼ドラ出演。
ホントに彼女がカンザスから羽ばたいてからの時間が素晴らしい。自分から動かないと、向こうからは何も返ってこない不変のテーマを、さまざまな出来事と人間模様と登場人物がチャーミングに描ききった脚本に拍手!地味なキャストが熱演がイイ味だしてて最高!
映画のような人生を送りたいと現実世界に嘆く、又は出会いが無いと嘆く人々の確かな存在。ベティサイズモアもそうであった。昼ドラに夢中で、昼ドラと共に歩んでいく人生。現実から逃れる為に昼ドラに没頭していく彼女の姿。肉体と精神の乖離が進む彼女の疲れた表情の不健康さ。暴力夫が殺される光景の現実から逃れる為の駆け込み寺として、昼ドラに入ってしまう。そう昼ドラと現実世界の融合を。
(大抵の映画だと、ここで彼女は病院に入れられたりしていくパターンを選ぶのだが、この監督は彼女を狂った人間として描かなかった)
精神が肉体と同期し、昼ドラが現実世界となったベティサイズモアは……どん底に行くことなく健全に、素晴らしく健康になったのだ。彼女は夫の存命中とは打って変わって、生きる楽しみを感じ大空に羽ばたき目を外に向けて美しさを満喫し始める。そして、彼女以外が次に不健康に陥る(と言うよりも、既に彼女と大差ない不健康さだったという方が正しいのかも。[例:ドラマのマンネリ])。で、その人々を助けるために看護婦ベティサイズモアが奮闘する様は痛快であった。
カンヌ脚本賞に異議なしです。ハイ。
2002/10/1
━━━蛇足━━━
この映画、精神障害を扱った。だが「周囲が何故精神障害と気づかないのだ?不自然極まりない」だとか、「コメディに描いているから不謹慎」ではないでしょう。私達は、精神障害と気づかない世界にいると言う事を忘れてはいけない。そのことを示した映画なのだ。精神障害に無理解な社会を描いている事を見逃してはいけないと感じる。
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