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[コメント] かもめ食堂(2005/日)

「いらっしゃい!」の一言に、ちょっとだけ泣いてしまいました。
ささやん

単身フィンランドに移住して食堂を開く女。世界地図でたまたま指した国へ来てしまった女。エアーギター選手権に惹かれてやって来た女…この人たち、日本で相当いろいろ苦労したに違いないと思うんだけど。「ちょっと脱線してみたくなって…」程度の動機じゃここまで出来ないよね、普通。

3人の間で保たれる微妙な距離感は、失う痛みを知っている人たちのある種の緊張感なんだろうと思う。「ずっと同じじゃ居られない」「人は変わっていくものだ」というのは分かっているけど、それでもやっぱり自分の好きなものや大事なものが変わっていくのは淋しい。愛着あるものとの別れは誰でも辛いものだ。だから、何事にもいつか終わりがやって来るのだということを、心のどこかで覚悟している。終わりを恐れずに迎えられるように。

正直言って僕にとっては、フィンランドの街も森もおにぎりもそれほど大きな存在じゃなかった。べつに設定自体は「ケニヤのうどん屋」でも「アラスカのカレー屋」でも問題なかったように思う。ただ、この映画が胸に沁みるのは、終わりを知っている人たちのやさしさとせつなさがじんわりと届いてくるから。サチエさんの「いらっしゃい!」の凛とした潔さ。…そう、料理だって食べてしまえば無くなっちゃうのだよね。始まりと終わり、終わりと始まりは常に一緒にあるのだなぁ。なんてね。

※僕は原作本は未読なので、3人の詳しい生い立ちは良く分かりません。噂によるとサチエさんは○○○に当たったとか何とか…それは無かったことにします、僕の脳内では。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)おーい粗茶[*]

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