作り手の許容を超えたブームの肥大化。監督はきっとこの作品からとっとと自由になりたかったんじゃないか、と。ネット上のカキコミや制作会社の落書きのカットバックに、何だかとても切ない気持ちになった。そんなにイヤだったのか、監督… この映画によって補完されたのは、もしかするとエヴァファンでもなく、ましてや人類でもなく、監督自身だったのかもしれない。いつしかエヴァが一人歩きし始めて、それが作り手を脅かす。「怖いのね」「だから人を傷つける」それが結果的に「気持ちいいの？（→観客俯瞰）」という挑発的なワンカットを生み出したのだとすると、あまりにも切な過ぎる。

ラスト、アスカが発するあの一言は、「気持ちいいの？」という監督の挑発に対する、監督自身が希望する回答なのかも。決して自分とひとつにはなれない他者の存在。互いを傷つけ合うその関係。それでも、他者を求めてしまうジレンマ（“他者”を“ファン”に置き換えることも可能？）。そう思うと、あの一言もそこに至る過程も、どれもが痛々しくて切ない。

弱くて卑怯な庵野監督の、赤裸々な心情吐露。結果的に、この世界（＝エヴァ）と訣別していかなければならなかったのは、他でもない監督自身だった。自ら作り上げた世界をことごとくぶっ壊し、それでもやっぱりすべての希望を捨て切れない。何となく、砂山を作って壊してまた作り直す幼児期のシンジの姿とダブって来たり。