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[コメント] 漂流教室(1987/日)

希望に満ち溢れた(?)ラストと、そこから取り残されてしまった観客の僕。漂流しちゃったのは僕のほうかもしれません。
ささやん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 梅図かずおの原作は未読だから、それとの比較云々はさておき、設定をアメリカンスクールに変更したのは、もしかするとトロイ・ドナヒューを引っ張り出したかっただけなんじゃないの?的な意地悪な見方を余儀無くされちゃう、と言うか…

 「あの原作をそのまま映像化するのは難しい」みたいなことを監督自身が語ってたのを聞いて、「それならきっと大林映画としての『漂流教室』が完成するに違いない!」と思っていたのだが、その期待はある意味見事に達成されていたのかもしれない。怪物がピアノを弾くシーンなんて、「あちゃ〜、やっちゃったよ…」と苦笑しつつも、ほんのちょっとだけ嬉しかったりしてね。登場人物達の青臭い台詞の数々だってヘンなミュージカルだって、鳥肌立てながらも生温かい気持ちで観られたし。

 …そりゃあね、原作の内容を伝え聞く限りでは、それをそのまま夏休み映画として作るわけにはいかなかったとは思う。でも、その答えがこれだったとしたら、それはそれで間違った答えだったような気はする。だって、ほとんどの人が『映画・漂流教室』を観に来たのであって、大林節を聴きに来てたわけじゃなかったんだし(もちろん僕は後者を期待してた異端者でしたけど)。でもね、これは大林監督の所為じゃないんだよ。彼を起用してしまった製作者側に問題があっただけなの。ってことにしておきたいんです、大林ファンの一人としては。

 ラスト、「あなたの子供を産むわ」みたいな発言をする浅野愛子に、未来への希望というよりは、何か聞いてはいけないことを聞いてしまったような気分になってしまったのは何故なんだろう?…それはきっと、主人公達の心の成長を映画の中で感じ取れなかったからだろうと思う。もっとも、その起爆剤となり得るはずの現世に残された大人達の思いが、ちっとも伝わって来ないことにこそ問題があったとは思うんだけど。

(評価:★2)

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