コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 肉弾(1968/日)

「アイツ」が「でっかい」のはモノばかりではない。真に守るべきものを持つ「でっかさ」があるのだ。それは愛国の精神に繋がるのだが、国粋的プロパガンダとは無縁。どちらかと言えば追憶にも似た哀しさ。悲しさと可笑しさの表裏一体。
マッツァ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「国家や天皇の為に死ね」などと言われても実感が沸かないのは事実で、そんな実態があるのか無いのか分からないモノより、自分の周りにいる親しい人たちの為に死ぬことを決意した兵隊の方が恐らく多かったのではあるまいか。そんな若者たちの純粋な気持ちを利用した戦争への怒りを「アイツ」は叫び続ける。

あんなアホみたいな肉弾作戦考えつく方が馬鹿だが、やらされる方はたまったもんじゃない気がおかしくなっても当然だろう。太平洋に一人ぼっちで投棄されるなんて野垂れ死にもいいところ。そんな極限状態で少女との出会いの切っ掛けになった数式をまるで念仏のように唱える「アイツ」。聖書や教育勅語からは心の支えを見出せなかった「アイツ」にとっては少女との想い出の一夜こそが今生の救いであって心の拠りどころなのだろう。それ自体は意味を持たない数式を唱えつづける「アイツ」の姿は痛切である。

そして戦争が終わっても「アイツ」はドラム缶の中で怒鳴り続ける。それは、ある種の人々(従軍慰安婦や戦争被害者など)にとって戦争は終わっていない事実をまざまざと訴えかけている。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)おーい粗茶[*] 荒馬大介[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。