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[コメント] シティ・オブ・ゴッド(2002/ブラジル=仏=米)

大雨の中、ずぶ濡れになりながら劇場まで行った訳だが果たしてそこまでの価値のある作品であったのか・・・? 2003年7月13日劇場鑑賞同年7月22日劇場再鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ありました。

ドラッグと殺人と紙一重の、ギリギリの世界で生きるガキども。頭脳と度胸だけありゃ生き残れる。そんな街、「シティ・オブ・ゴッド」。見捨てられた街で繰り広げられる現実。が、その現実を目の当たりにしながらも、平然と見ていた自分て。。映画の中=虚構と言う方程式が固着してしまい、いくら「事実に基づいた話」と知っていようと、年端も行かぬ子供が銃をおもちゃの様に振り回す姿に戦慄する事は無い。俺の感覚は麻痺ったのか?恐らく、俺だけじゃないと思う。そう思ったのは。

この映画に関して、どうも感想が思うように思い浮かばない。別に映画で見せられた「現実」に狂喜した訳でも、戦慄した訳でもない。ただ淡々と見た。素人の役者を用いた演出は見事で、リアリティ抜群。何もかもがパワフル。荒々しい映像に細かい編集。映像から勢いが溢れてくる。カメラマン志望の少年の主観を通してリトル・ゼの一大叙事詩(?)を語り挙げる。が、そのリトル・ゼ。女に近づいても逃げられ、ダンスも出来ず、一人で切れて人を殺す、ただのロクデナシ。そんな奴がのし上がって破滅していくまでを見せられるのがこの映画。

だけど、この映画のストーリーなんてどうだっていいんだよ。この街の現実を描写した暴力映像は確かに強烈かもしれない。クライマックスの抗争劇なんてもう戦争です。マシンガンにショットガン、小学生くらいのガキが拳銃貰って喜んでます。この街で「人を殺さない」なんてルールは無意味。強盗する時は常に例外が生まれ、いずれ例外がルールとなり、旧ルールは例外となる。この映画にカタルシスは無い。現実を延々と見せる、そんな映画だから。

現実を見せ付けられ続けるのがこの映画。なんたって童貞捨てるより先に殺しをする街だから。

だけど、この映画で最も強烈なのはラストシーンだろう。リトル・ゼをガキどもが殺し、その後笑いながら今後の方針を語りながら歩いていく。この街の暴力に終わりは来ない。恐らく今、この時間にも暴力は途絶えていないだろう。それが現実なのだ。

そして二枚目のマネ。最初の心情が、ギャングと居る時間が長くなるほど崩れて域、「例外」が「基本」となり、「堅気」がいつしか「チンピラ」になる。結局この街で堅気を貫くのは至難の技と言う事だ。これもまた、「神の街」の現実だ。

なーんか、上手く感想が思い浮かばない。だけど、抜群の編集センス、テンポ、そして暴力と言う現実。こいつらを圧倒的スケールでストレートに描き出し、「てめーら、これが現実なんだよ!」と俺の目の前に突き出してきやがったこの映画、すげーよ。なんかよくわかんねぇけど。

だけど、どうだろう。期待したほどの作品だったか、と問われると期待を上回った訳でもない。容赦ない暴力描写があった訳でも無いし、テンポは良いが想像と少し違った。編集や演技、演出などに関しては文句なしだが・・・どうもなぁ・・・

★4.5

―――追加 2003年7月22日劇場再鑑賞

と、言う訳で、前回見終わって、自分のこの映画に対する評価が曖昧であった事から、再び劇場まで足を運んだ。正直、前作を見終わった時の感想は「面白いけど、何かなぁ・・・」と言った、よくわからない消化不良が残った。

で、今回見てはっきりした。前回の評価、★4.5の映画ではなく、★4の映画であると。

大体、俺はこの映画が何をやろうとするのかが、よくわからない。確かに面白い映画である。だけど、この映画は一直線にエンターテイメント、と言うかヤクザ映画的なノリで見るべき映画なのか、それともスラム街=神の街の壮絶な現実を描き出した映画、だと捉えるべきなのか。

鑑賞前は後者だと信じ込んでいた。結果、一度目の鑑賞後には、この映画から必死に何かしらのメッセージと言う感じの物を探していた。だが、二度目を見て気付いた。この映画はエンターテイメントだ。

中たるみせず、力のある映像と編集、銃声とドラッグ、ギャングと抗争、そして流血と殺戮。それらパワフルな要素でぐいぐいとスクリーンに引きつける。話も面白く、主人公ブスカペの主観視点を通して、リトル・ゼの破滅までを描き出す。その中に何度も街の「現実」が映し出される。しかし、それは我々の「現実」からはほど遠い物だ。

結果、エンターテイメントにしか見えなかった。だが、そのエンターテイメントの下で、何かが必死にもがいてる感じがする。つまり、「面白い」のだが、それ以上の物が無い。映画の暴力に慣れきった我々にとって、この程度の「現実」は特に衝撃とも思えず、結果的にそれはエンターテイメントとなってしまうのだ。

その様な考え方をする自分が一番怖い訳だが、その手の人間にこの監督はこの映画を持って何を伝えようとしたのか?俺にはよくわからない。

力量はある。ただ、何かが曖昧になっていて、結果的に「面白い映画」としか捉えられない。残念。

っていうか、単純に俺が映画の中の暴力を見慣れてしまった事に問題があるのかもしれない。そう考えれば★4は過小評価の様な気もしない事もないが・・・

(評価:★4)

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