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[コメント] ヘヴン(2002/米=英=仏=伊=独)

所々、美しいカットはあるのだが、最後までイマイチ掴みきれない主人公二人。 2003年5月17日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







チラシには「巨匠キェシロフスキ、幻の遺稿脚本の完全映画化」と書かれている。この人の作品も、監督の過去の作品も未見。故に、何と比較すれば良いのかわからないし、この脚本家の良い所など知る訳も無い。まぁ、その方が、その「キェシロフスキの作品」と言う視点からではなく、「一本の映画」として評価できて、公平と言うか、一番適当な感想が言えそうな気もする。

なんと言うか・・・。前半、ビル爆破(小規模だったけど)シーンの時の親子や、トイレ(?)でケイト・ブランシェットが着替えている時に入ってきた掃除婦の会話などから、登場人物の葛藤などを生み出す脚本は確かに上手いと思う。彼女は憲兵所で言われるまで子供を殺した事を知らなかった訳だが、観客は知っている。だから彼女の葛藤が解る、と言うかなんと言うか・・・。まぁ、そういう見せ方は上手いと思ったが、その後の展開は如何な物か。

悪役(憲兵達)の間抜けぶりと言うか、主人公二人が易々と逃げている姿にはどうも疑問が浮かぶ。計画を変更したとは言うものの、いくらなんでも楽に逃げすぎだし、ラストで「友人の家」に特殊部隊が突然来るのも唐突過ぎる感がある。

静かで、どことなく美しい映像と音楽には好感が持てるが、美しいにも関わらず短すぎるラブシーン、ラストの中途半端さ(空飛んで終わりですかい!)等、曖昧さが残り、「透明な愛の物語」と言うか、「曖昧な愛の物語」と言った風な印象が残った。

ケイト・ブランシェットの演技は確かに良いし、別に静かで台詞も少ないながら退屈はさせられなかった。しかし、気がついたら終わっていた。陰謀も暴かず、殺してしまえば後は二人の逃避行。その中で彼女の心がかすかに揺れ動いている様子など、伝わってくる物はあるのだが、やはり時間が短すぎると言うのか、この内容を一時間半で語るのは多少厳しいのではないだろうか。

結局、ラストシーンでヘリで飛び立っていく二人を、下で発砲している特殊部隊の隊員と同じ気分で見守っている感じがして残念だった。雰囲気は良いのだが、何かひとつ足りない、と言う不満が残り、消化不良を起こした。

★2.5

(評価:★2)

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