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[コメント] 北京ヴァイオリン(2002/中国=韓国)

大泣きしたけど、何かが足りない・・・と言うか・・・う〜む。 2003年7月17日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







バイオリンがやたら上手い少年と、その親父。田舎町で細々と暮らして貯めた金を持って、いざ北京へ。いい先生を見つけて成功させたい親父と、遊びたい(?)エロ息子。息子は反抗しながらも、次第に親父の愛に気付いていく・・・が、俺は捨て子だったのか!?って話(なんか違)

なんつーか、田舎のダメダメ(社会的地位と言う意味での)のおやじさんが息子の為に必死に働く姿がここまで説得力あるのは、中国だから(偏見?)だろうか。田舎と北京、と言う会とのギャップ。親父のダサい服装等から、どれだけ親父が必死に息子の為に働いているか、と親父の素朴な優しさが見えてくる。田舎と北京の町並みの描写のギャップが、親父の「息子の為に必死に働く頑張り」を上手く描写している。でも、何よりも息子と親父のギャップが見事。冷静な息子に対して落ち着かない親父、このギャップ(実はこれは、息子が捨て子、と言う事実への伏線なんだけど)があるから、意見の対立からラストへ繋がる訳だ。

劇中、二度ほど泣きじゃくり、親父と息子の絆に涙が止まらなかった。とにかく、息子が遊び回ってる間にも親父は必死に働いて金を作って、とにかく息子の為に貯める、と言う姿に俺は心を打たれた。これは万国共通のものだろう。親父の思いは唯一つ、「息子に成功して欲しい」。それが拾った子供であるにしても・・・。

正直、ラスト付近までは★5をつけても問題ないと思っていた。演出も手堅く見せて泣かせ、親子の対立を通してラストに持っていく王道演出。とにかく親父の切実な思いと、それに反抗しながらも親父の気持ちを理解していく息子のには涙が止まらなかったが、ラストで親父が息子を拾ったシーンがオーバーラップ(?)する辺りで俺は気付いた。この映画のストーリーがどこにでもある物なのだ、と。

映画を見終わって、あれだけ泣いたのに何かが足りずどこか消化不良であった。描くべき物をきちんと描き出し、映画全体を通して見ても特に問題は見付からないが、ただ一つ、プロットがどこにでもありそうなのだ。「拾った子供の側にはバイオリン。育てるとバイオリンの天才に成長」。

上にも書いたが、「ダメダメ親父が息子の為に必死に働く姿は中国だからこそ説得力がある」(かなりの偏見かもしれないが)と書いている通りで、それを上手く描き出す事によってありふれたプロットが見事な映画に昇華している。確かにその手腕は評価すべき所であるのだ。だが、何か一つ心に訴えるものが足りない。恐らくプロットのせいではない。ラストシーンでも、技術的な不足でもない。だが、何か心に響いてくるものが一つ欠けている気がする。

しかし、十分見事な作品。特に文句をつけるべき箇所も無く、ラストシーンの駅でバイオリンを親父の前で演奏する息子(考えてみれば、劇中でバイオリンを親父の目の前でマトモに演奏していないような気が・・・)の姿に、父親の深い愛、息子の深い愛を感じ、映画が終わった時思わず拍手をしそうになったのは言うまでも無い。おまけに、息子を通してあの女性を素直にさせたり(最初と最後の部屋の描写の違い)、先生を素直にさせたり、とおまけまでつけてくれる。だからラストシーンは心温まるのだが・・・何も全員(つーても親父、おねーさん、ひねくれ先生の三人だけだけど)揃える必要性も無いような気もせんでもないが・・・。まぁ良い作品でした、と言う感じの映画。

しかし、この素朴で息子の成功だけを切実に願っている親父の姿は、安っぽいプロットでもメチャクチャ心に響きます。

ま、地味に泣かせてくれる映画って感じかね。もう少しひねって欲しい。これじゃマジ三文プロットだよ。よって★一つ減点。

(評価:★3)

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