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[コメント] 東京ゴッドファーザーズ(2003/日)

クリスマスムービーだとばっかり思ってたけど(確かにクリスマスムービーだけど)ちょっと違うモノだった。。。 2003年12月26日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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23日に鑑賞予定も、見逃してしまい、結局クリスマス過ぎてから見に行ったが、これは単純なクリスマスムービーではなかった。当初、「どうしてこんな地味な話を?」とは思っていたが(っていうか皆思ってたみたいだし)、見てみてびっくり。いや、これはアニメじゃないとダメな気がする。

とにかく喋る。そして動き回る。「東京」という場所を舞台に、親を探して歩き回る地味な話だ。確かにアニメだからできるようなアクションもあるが、それでも地味な話だ。だが、この「出来すぎた話」はアニメと言う物を通して見ると、何だか自然にすら思えてくる。

ホームレスがホームレスに見えないのも、東京にあんなにタイミング良く雪が降るのも、「奇跡」が連続して起こるのも、そして見事に皆ハッピー(?)になって終わるハッピーエンドも、出来すぎたありふれた話なのだ。だけど、どうしてこんなにひきつけられるのだろうか。

千年女優』で度肝を抜かれ、この監督やばいぞ、と思っていたので次回作はトンでもないのを作るんだろうな、と期待していたらこんな地味な話。中盤までは話を語る事に専念し、ようやくクライマックスでアニメらしく良い意味で無茶苦茶な事になり始める。しかし、この中盤までの物語を語る事に徹したにも関わらず、テンポも緩くなく、無駄も無くあっさりとした良い演出なのだ。この監督、こんなふつーな映画も撮れるのか、と一人関心。

色々なモノ(ホームレス狩り、家出、家庭内暴力、頭の固い野郎ドモ、等々)を盛り込みながら、テンポ良く、しかも飛びっきりのハッピーエンドまで持っていくのだからたいしたもんだ。しかもこれだけ詰め込んで上映時間は1時間半程度。

嘘で固めた身の上話を吐き出し、変な意地を張り、素直になれないで居る中、「清子」の存在を通して少しずつ自分の愚かさに気付いていく主人公たちの心理描写も見事。クライマックスのミユキの説得には涙が出た。

確かに詰め込み捲くっているが故に、多少不足があるかもしれないが、このくらいが丁度良いと思う。肩の力を抜いて、時に現代社会が抱える事柄を考えながら、時に笑い、そして泣く。見事な映画じゃないですか。「ベタ」ばかりが溢れている映画だが、アニメーションと言う表現法を通して自然に、そしてテンポよく描ききる。

脚本も良いんだろうし、演出と絶妙に噛み合っているんだろうなぁ、と思いながらラストシーンの幸せな余韻と、前作『千年女優』からは想像も出来ない踊る東京タワーを見ながらニヤニヤしている俺が居た。

欲を言えば『千年女優』みたいなトンでもないにやりとさせられるオチが欲しかった・・・けど、そんなのあったら映画が崩れるわな(笑)

多く書く必要の無い、文句なしの見事な映画だった。純粋に面白い。そうそう、あのオープニングのクレジット。あれも洒落てて良かった。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)桂木京介 あさのしんじ スパルタのキツネ[*] 秦野さくら[*] セント[*] 水那岐[*]

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