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[コメント] シービスケット(2003/米)

序盤は眠気に襲われて、ちょっとばかり寝てしまった。けど、その部分を含めても、一本の映画として中々良かった。純粋に「良かった」と言う感想が出てくる作品。 2004年2月12日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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序盤、何か人物関係が把握し難い、と言うかテンポが悪い、と言うか、何か良く分からないけどグダグダで「何だよ、これ」と言う感じで、見事に眠気に襲われた。実際、序盤はあまり良いとは言えなかったと思う。って、寝てたから良く分かりませんけど。

しかし、大恐慌の中で希望を失った人々。そんな「つまづき」を乗り越えて、レースで勝ち続ける一頭の馬の希望は、あまりにも強烈な光を放つ。確かにこれは9.11を経たアメリカが作った美談かもしれない。しかし、それでも今の、不景気と言われている、日本の野郎どもにも必要な「希望」である様に思える。

くじけても立ち上がって走ろうとするシービスケットの姿と、その走っている姿に全てを賭けた人間たちの希望。そして、希望に希望を貰い、再び日々の生きる糧を得て、どうにかくじけずに生きていこうとする人々。絶望に必要なのは、自分を信じてやれる事をやり続ける事、そんな感じ?

東部の馬にシービスケットが勝った瞬間の興奮と感動は本当に良かった。思わず握り拳握って応援してしまう。レースシーンの撮影と音響のお陰。あの迫力は本当に凄かった。この地点で、泣きはしなかったけど、本当に、久しぶりにメジャー作品で「あぁ、良い映画だなぁ」と思えた。

しかし、その後のレースで靭帯を痛めて、もう走れないと宣告されたシービスケットと、落馬して骨折して下手すればもう歩けなくなるかもしれない一人の若者が、クライマックスで再び輝きを取り戻す時の興奮と感動は、話題づくりの為にセッティングされた東部の馬との競争よりも、果てしなく深い感動があった。あのレースシーン。中盤で失速気味になりながらも必死に走る騎手と馬を見ながら、勝てなくても周りが彼らを応援する理由をド本気で肌で感じた。その瞬間、涙が止まらなかった。何度くじけても、ダメだ、と思っても諦めずにやれる事をやり続ける。希望を持って走り続ける。その姿に俺の涙は止まらなかった訳ですが、さらに追い討ちがかかる訳ですよ。

ライバル(?)の騎手が敢えて後ろに下がってきてシービスケットにわざと目を合わせる。一度、シービスケットに乗って一緒に栄光を掴んだ人間だから知る、彼の潜在能力の出し方。そして、シービスケットのラストスパート。その姿に俺の緩い涙腺が洪水を起こし、感動と興奮の坩堝となった。

東部の馬との対決を控えてトビー・マグワイアは、落馬して足を骨折して乗馬が無理になる。その時、ライバルであり友人である人間にシービスケットの癖等を全て教え込む。そして彼は最後の最後のラストスパートについて「脚じゃない、(胸を指しながら)ここだ」と説明する。

あざとかろうが、何だろうが、紛れも無くその言葉は何度くじけて落ち込んでいようとも、必死に前を見て努力してみろよ。けど、最後は心の問題なんだ。諦めない根性こそ、どんな努力よりも大切だ、と言い放つ。

そんな事思い返して居るとあまりにベタな話であろうと、アカデミー賞最有力と言われながら他の作品と比べるとインパクトが低かろうと、多少音楽がミスマッチな箇所があろうと、序盤がだるかった事なんてすっかり忘れて、俺は、前向きな明るい余韻に浸りながら劇場を後にするのでした。

ついでに言うと、脚を怪我して医者にもう走れない、と宣告された馬を安楽死させるか否かで「殺さない」と決断する。これは、まさに大恐慌時代で絶望のあまり自殺して楽になろうとするのではなく、前向きに生きてみろ、と言うメッセージを込めてるんですね。

見る前は、一年に一度は出会うよくある感動物、と勝手に解釈していた。確かに一年後には忘れているかもしれないが、この作品の描き出す希望の形は、今の時代に最も必要とされている希望の形である様に思える。だから、単純な「感動作」でも、これだけ気持ちの良い余韻が残せるのだと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)makoto7774[*] まきぽん[*] 映画っていいね[*]

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