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[コメント] イノセンス(2004/日)

支配欲? 2004年3月29日劇場鑑賞(★3に近い)
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







えーっと、喋りすぎです。はい。引用等を用いて難解ぶっているけど、ハッタリなのでしょうか?僕は良く分かりませんけど、とにかく喋りすぎ。登場人物がベラベラベラベラベラベラベラベラ。いつまで続くかと思えば、ようやく終わって画面が動き出し、しばらくしたらまたベラベラベラベラ。難解ぶった台詞をベラベラ(中略)ベラベラと喋る。

別に喋る事は勝手だし、その「喋る」と言う行為を通して作品の世界観が深まるのなら別に構わないのだけど、どーもこの映画に於ける「喋る」と言う行為は無駄が多すぎた気がする。と言うか、偏見なのかもしれないけど、ヴィジュアルを意識しすぎているんだよね。別に悪い、とは言わない。だけど好きになれない。何か、もはやそこに、俺の知っている「アニメらしさ」(←詳しくない人間なので多めに見て下さい)はなくて、CGが半ばメインになりかかっている世界をこれ見よがしに見せて周る、一種の自慢比べみたいに見えて不愉快極まりなかった。

いや、別にCGアニメーションがアニメではない、と言いたい訳じゃない。だけど、CGが我が物顔(?)に氾濫する映像は、どんな映画であれあまり好きにはなれない。それ単体にそれだけの魅力を感じ取れた場合とかは別に構わないのだけど、あくまで世界観を生み出すために用いた、要するに脇に回るべき物を前に押し出して協調するのは、俺の好みではない。物語は背景で語るのではない。

そういう訳で、金をつぎ込んで、もの凄い映像を作れたのはわかったから、はよストーリー進めろ、と言いたくなるシーンが何度も出てきた。この作られたヴィジュアルが作られたモノ、と思えば思うほど、どうしても気分が悪くなってきて、見る気が失せてくる。

何か、そこにあるのは機械的なモノが、どこまで実写に近づけるかを必死に競っている感じがして、それは目指す物が違うのではないのか?と思ってしまった。否、もしかすると押井監督はそれも狙っていたのかもしれないけど。映画は「人間に限りなく近づく人形」。なら映像も「実写に限りなく近づくアニメーション」と言う風に、洒落をしてみたのだろうか?

でも、この作品でアニメーションが実写に近づく必要性があったのか、俺はどうもそうは思えない・・・。確かにその奥行きとか緻密さに圧倒され、その世界観は見事だとすら思ったよ、一瞬は。だけど、すぐに我に帰って、「この世界観は物語を語る為ではなくてヴィジュアルを見せる為に作られたものなのでは?」とあらぬ考えをしてしまった俺が居る。失礼ながら。でも、それが事実だとすると、この作品の点数を下げなければ成らない。

その二点、台詞と映像、を除けば、作品としてはそれなりに楽しめた。台詞こそ難解だけど、ストーリーそのものはさほど複雑と言うほどでもなく思え、そのウネウネとした世界観に身をゆだねて難解な台詞と共に「あぁぁぁぁぁぁ」と訳の分からない世界に入り込んでいった。

アクションシーンもカッコ良かったし、個人的にはそれなりに満足できた。特にクライマックスの、何故か戦艦みたいな会社でのアクションは、どこか悲壮感すら漂っていて、ちょっと泣きそうになったぜ(アホ)

見ている時は、そのヴィジュアルに嫌悪感を抱きながら、台詞のハッタリぶりに身を委ねながら、「どうかなぁ・・・」と思っていたけど、見終ってみると、なかなか良い余韻に浸れている自分が居て、満足して劇場を出れた。

◇    以下、映画にあまり関係のない事。

どうでもいいけど、愛ってのは一種の支配欲だと思います。って、何を今更、って感じかもしれませんけど、例えば劇中で言われる、子育てと人形遊びの関連性なんかにしてもそうだけど、もしかすると繋がっているのではないだろうか?そして、その裏には「自分の物にしたい」と言う支配欲がグルグルと渦巻いていて、ただ単純にそれを「愛」と呼んでいるだけではなかろうか?

「近くに居たい」と言う願望は、「いつも保持していたい」と言う願望にすぎなくて、結局相手を支配したい、そう願っている事に変わりは無い。そして、その結果、人形が生まれたのではなかろうか?

ダッチワイフのセックスメカ(って、それは『AI』のジュード・ロウか)だって、「自分の思い通りになる相手が欲しい」という願望から生まれたモノではなかろうか?

そして人は、エゴ故に人形を生産する。研究し、組み立て、大量生産し、人間社会にばら撒かれ、溶け込む。しかし、ロボットはロボットにすぎず、人間のエゴの下に「使われている」にすぎない。

しかし、ある日、誰かが人間に限りなく近い人間を開発したとする。その人形は心を持っている。心を持っている、だからこそ支配される事を嫌がり、自らのアイデンティティを確立しようとする。しかし、エゴの塊の人間はそれを支配しようとする。支配すれば自分達に幸福が訪れるから。だが、人間に限りなく近い人形は心を持ってしまった故に、自らを防衛する。突然人に牙をむき始めた人形に困惑しながらも、どうにか制御し、元通り「人間の道具」にプログラムし直そうと試みる人間達。

しかし、人間の欲は底なしで、支配欲故に「感情を持った道具」を作りたがる。感情を持っていれば人間に限りなく近い、と言う事は人間が今までしなければならなかった事を人形が行ってくれるから、人間に及ぶ危険が少しでも軽減できるから。人形は、人間の替わりに人間の仕事をこなす。一度反乱を企てたりしようものなら、人間にぶっ壊される。

果たして人形は生まれることを望んでいるのだろうか?

人間って弱いね。愚かだね。でも、凄いね。本当に凄い。

そんな事を思いながら映画を見ていた。

(評価:★4)

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