コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] キル・ビル Vol.2(2004/米)

最終章にやられた。突然テンションダウン。以下、白けっぱなし。 2004年4月22日試写会鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まさか最後の最後に『キス・オブ・ザ・ドラゴン』が来るとは思わなかった。っていうか、娘の奪還だとか中国拳法だとか、『北斗の拳』風ツボ突きだとか、もしかしてタランティーノってリュック・ベッソン化してきてるのか!?(多分違う)

いや、別に中国拳法を使おうと、使うまいと、別にあの幕切れに不満な訳ではない(『北斗の拳』かよ!と笑ってしまったけど)。ただ、問題なのは最終章「face to face」が異常に冗長で退屈な事にある。ユマ・サーマンが何度泣こうと、ビルとユマ・サーマンがどれだけダラダラ会話をしようと、この映画は一作目で示した通り、痛快娯楽作でなくてはならないでは?と思う。そして、この映画は娯楽痛快作では無く、ただ映画の中で何かが起きているだけ。つまらん。

いや、タランティーノがこの映画で客を泣かそうとしたのかは知らないけど、もし仮にこの映画を前作のように悪党をバッタバッタ切り倒し、奇想天外な敵が出てくる仮想現実JAPANを舞台にした様な「痛快娯楽作」として作って結果がこれなら、言い切ってしまうのは失礼だが、この人はもうおしまいだ。

本人がこれを「痛快娯楽作」と言い張るのなら、『レザボアドッグス』に始まり、『パルプ・フィクション』や『ジャッキー・ブラウン』の素晴らしさなんかに到達できる訳はない。

キル・ビル』は所詮、小ネタの集まり、と言う印象しか残らない。「映画」としての面白さではなく、そのディープなB級ギャグの数々が面白かっただけではなかろうか?

確かに一作目(元々は一本の映画なので、こうやって分けて呼びたくは無いのだけど)とノリの違った映画になっている。一作目が痛快スプラッターと言うのなら、二作目は・・・何だろう?マカロニウェスタンじゃないよね?良く分からないけど、とにかく全く違う作品になっている。

個人的に、一作目のノリは好きになりきれなかった。そこに俺が求めるタランティーノが無かったから。で、二作目はノリが違うと聞いていたので期待していたが、確かに話は前より練ってあり、ノリもシリアスに傾いていて作品としては多少奥深くなっているが、結局大した作品ではない。結局、ノリに走っているのだ。この映画にタランティーノらしさ、と言うのを感じる事が出来なかったし、台詞であんなにお互いの関係とかをダラダラ喋られても、そんなの「タランティーノ映画の会話」ではない。

キックボクサー』な匂いのする中国での武術修行は、わざわざ画面の色調まで変えて、カメラワークも他と違った様子の撮影で挑んでいる。確かに面白いシーンだったが、作品中でそれほど重要なシーンだろうか?確かに墓場からの脱出での、(字幕によると)7cmパンチの使用の伏線にはなっているが、どうもこじ付けにしか見えない感じがする。それに、この修行シーンで、前作でも感じたユマ・サーマンの動きのキレの無さが良く分かった。だが、まぁこれは「修行前」と言う事でアレで良いのだろうし、今回は前回とは違ったアクションの質なので、ユマ・サーマンのアクションは全く気にならずに見れた。

そそう、墓から脱出するシーンはモロ『死霊のはらわた』って感じがして思わず爆笑してしまった。

他にも、オープニングから「テキサス(の教会での)惨殺事件」とのナレーションは、どことなく『悪魔のいけにえ』の「Texas ChainSaw Massacre」を意識してる感じしたし(勿論これでも笑った)。

要するに、見た目は違えど、同時製作な分だけ、根底にある考え方は同じなのでは、と。こういうノリの映画は嫌いじゃないけど、どうしても『キル・ビル』に関してはノリ切れない。何故だろう。

俺は色々と貶してるけど、正直「最終章」までは★4でいいと思っていた。エル・ドライバーとの戦いまではかなり楽しめたのだ。テンポも良く、多少のこじ付け的な伏線も許して、前作の血みどろスプラッターとは少し違うノリに、俺は結構良い感じで楽しんでいた。でも結局の所、話自体に工夫はあまり見られない気がする。10章に分けて構成しているが、さほど大した効果を生んでいるとは思えない(むしろ、過去の物事の説明回想を挿入する為に利用しているだけだろ)。単純にキャラクターと小ネタで持たせているだけ、と言う感じがして悲しい。

実際、小ネタでもたせているせいか、前作にしてもそうだけど百人斬りとか、服部半蔵とか、オーレン石井の物語とか、ゴーゴー夕張等しか記憶に無い(プッシーワゴンなんて二作目でその話が出てきた時に初めて思い出したし)。正直、映画としては魅力に欠けるのだ。勿論この二作目もそうで、見終わった直後は割りと面白かった、と思えたかもしれないけど、後々思い返してみれば、ただ退屈しのぎになった、程度の凡作でしかない、と言う印象しか残らない。

やりたいようにやった結果が、過去の3作品の様に、映画そのものが記憶に残るのなら、俺は満足。だけど、この二部作の様に、見終わって映画の面白さよりも、小ネタの面白さ程度しか残らない映画なら、見ている間ある程度ノレたとしても、これが今まであれだけの映画を創ってきた監督の作品であるのなら、俺は不満。

あっ、それからマイケル・マドセンの扱いがちょっと辛かった。もっともっと活躍して欲しかった気がするけど・・・まぁ、エル・ドライバーがカッコよかったからいいか。

そう、前回がオーレン石井なら、今回はエル・ドライバーなのだ!ユマ・サーマンとのトレーラー内での格闘は燃えましたね、アレは。ホント、アレがあるから映画が引き締まってたよ。あそこまでは本当に面白かったのになぁ・・・何しろ、他のキャラに比べてビルに魅力を感じられないのが大きい。個人的に、主人公も割りとどうでも良いので、悪党ドモ一人一人の面白さを楽しんでいたのだけど、下っ端が死んでしまい、一騎打ち、つまり最終章になってしまうと、訳の分からない感傷に浸って泣いたり笑ったり『子連れ狼』見たり、と、正直退屈。最終的に娘を取り返して、モーテル(?)で二人仲良くテレビ鑑賞して微笑まれても、それまでに完璧に突き放されているので「何泣いてんねん?」って感じで冷めてましたよ。

っていうか、タランティーノはこの映画で客を泣かそうとでも思ってたのか?そりゃ思い上がりも良い所だろ。

見終わってもだから何?程度にしか感じられず、この映画がタランティーノの映画である事すら忘れていた。多分半年もすればどうでもいい映画になってる。おまけして★3

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)モノリス砥石 けにろん[*] ガリガリ博士[*] セント[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。