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[コメント] 世界の中心で、愛をさけぶ(2004/日)

べたで青臭くて、本当に86年なのか疑問な青春ラブロマンスな回想シーンは、バカバカしさを遥か通り越し、バカバカしい故に憧れを抱く俺が居る。 2004年5月29日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







と、良く分からないことを書きましたが、誰しもこのバカバカしくて青臭くて思わず噴出してしまいそうになるほどベタベタのラブストーリーに、憧れを感じた事でしょう。映画が面白いか面白くないかは別にして・・・。

原作は未読ですし、映画を見る前にあまり情報を入れたりしない、入れても上映時間とかしか入れない人間なので、ストーリーは全く知らない状態で見ましたが、見る前からどの程度の出来の作品か、と言うのはある程度予想できてたし、実際見てみるとその通りだった。ので、肩透かしを食らった訳でもなく、特に損した気分にもならなかったのですが、それでも、無理して時間割いてまで満員で人がごった返し、マナーの悪い客と、楽しそうなカップルばかりの地獄に男二人で乗り込む程の作品だったか、と聞かれれば、手放しで「はい」とは答え難い程度だけど・・・。って良く分かりませんね。

とにかく若手の二人の初々しさが素晴らしい。この際、あの大人パートを全て切り払って1時間三十分くらいの、純粋無垢な、イノセントラブストーリーを展開させた方が面白かったんじゃないのか?と思うほど、ひと夏の切ないほろ苦い恋、と言うか何と言うか、が上手くイキイキと描かれていた。例外なく、劇場に鼻をすする音が鳴り響いたのは、空港で亜紀が倒れ、朔太郎が必死に「助けてください」と叫ぶシーンだった訳であります。

作品を見れば分る通り、全ての演出はそちら側に対して力を注いでいる感じがあり、大人パート、つまり作品のクライマックスとも言える最後の30分くらいは非常に冗長でダラダラした物となっていました。

そもそも、細かい事を言うようだけど、確かにこの映画は回想形式、つまり回想=大人になった朔太郎の脳内に残った思い出だが、どう見ても1986年って時代に見えない・・・なんだか90年代な香り漂う感じがする。否、86年生まれの俺が言うのも何かおかしいのかもしれないけど・・・何かなぁ。大体、あんな綺麗な空港あったのか?

他にも、時代とは関係ないのだけど、あんな過去を引きずった男がよくフィアンセなんて持って結婚直前まで話を持ってこれたな、とか、結婚直前のクセにどうしてお互いの事良く知って無いんだよ、みたいな突っ込み所もありますし、大体、その最後の30分では、衝撃の真実、「最後のテープは私が持っています!」が出てくる訳だが、その柴崎コウ演じる女の心理描写が不十分な感じがする為、少々蛇足に思える。

挙句、突然場面がオーストラリアに変わり、手品の如く突然骨の入ったビンを取り出してみたり、と、「おいおい」な所満載な訳だし・・・。そもそもこの大人パートの物語って、少年時代のラブストーリーの純真さにインパクトが強すぎて、如何せん力負けしている感じが否めない。大体、「助けてください!」のシーンであれだけ泣いてた客に、その後30分もダラダラ作品を見せても仕方ねぇだろ・・・とか思っちゃったりするんですが、どうなんでしょうか?

ま、そんな感じで、結果的に蛇足にすら思えてくる。ま、それ以上にフィアンセに対する心理描写が不十分だった、と言う点が一番不満なんだけど。

だけど、あそこできちんと丁寧に描いていたらそれもそれで困る。確かに、原作のヴォリュームがどれ程の物かは知らないけど、ある程度コンパクトにまとめている脚本には好感が持てたが、それでもさすがに2時間20分は長い。せめて2時間前後が限度かと・・・ケツ痛かったし。もしかして時間の関係で、大人パートのシーンを結構削ったんですか>製作陣

だとしたら、やっぱり行定勲は大人パートの話にはあまり興味が無かったって事か!?

どちらにせよ、あの主役二人の若いパワーこそ、この映画の成功の秘訣でしょう。だって他には特に良い所見当たらないもん。

ただ、だからと言って手放しで誉められたもんじゃない。「白血病」「死」を扱ってはいるものの、両者共に描き方が軽薄に思え、結局「死」と言う物をエンターテイメントの材料としてでしか扱って居ない感じがしてならない。結局、泣かせられればどうでも良かったんじゃないの?と言うあらぬ考えを思い浮かび、だからこの話は「青春恋愛映画チック」というベタベタな路線から一歩もはみ出さない話なのか?と一人首をかしげる訳であります。

全編に渡って手ぶれしまくりの、きっと担いで走り回っているであろうカメラは『リリイ・シュシュのすべて』等々と同じ方。岩井俊二チックな、光を集めて画面がきらきら光っている様な映像がちらちらあり、少々目障りな感じがした。なんつーか、あの映像演出はしつこい。やりすぎ・・・と言うか、嫌味っぽい。岩井俊二の映画で見ると、良い感じに見えるのだけど、この作品だと逆に居心地の悪さを感じた。

俺が見たかった映像はあの手の映像じゃなくて、もっと自然体の映像なんだけどなぁ・・・ホラ、少年時代のラブストーリーだって、あの初々しさは自然体だと思うし。それに森山未來を配役したのも、カッコよくない、アイドル顔ではなく、自然な、何処にでも居そうな奴、としてキャスティングしたのだろうから、あぁいう詩的なきらきら輝く映像は大人パートのみでよかったんだと思うけどなぁ・・・

せっかく海辺の綺麗な町をロケしてるんだから、もっと潮の香り漂う映像が欲しかった。

音楽は切なく演出すべき所をきちんと演出できてて良かったと思います。

ダラダラ長くなりましたが・・・まぁ長い間記憶に残る作品、とまでは行きませんね。

余談ですが、満員(しかも若い連中、勿論俺もだけど、ばっか)の中、俺の隣には中年(失礼?)夫婦が鑑賞していた。奥さんは夫の方に寄り添い、二人で仲良さそうに。そして、奥さんはひたすら映画を見ながら泣いていました。

考えて見れば、1986年ってこの人たちのリアルタイムの青春時代じゃないか・・・。そうやって夫婦で仲良く映画が見れるって羨ましい。

そんな事を考えながら眠気で白目をむいている俺。

(評価:★3)

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