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[コメント] オールド・ボーイ(2003/韓国)

チェ・ミンシクは当然の事ながら『リベラ・メ』の(上手いと言い難い)印象の強かったユ・ジテの圧倒的カッコよさ、徹底的キレっぷりに感動。獣以下でも生きる権利はある。但し、背負う罪は人間だから重い。見事な怪作 2004年11月24日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







意図したのかは分からんが、動物は近親相姦を許される(自然の摂理として?)。しかし、人間は倫理的に、道徳的に許されて居ない。つまり、ソレを犯してしまえば人間を脱する事になる(と考える事もできる)。

彼ら二人(と相手女性)は、もはや人間ではない。

オ・デスが使ったハンドルネーム(だよな?)の「モンスター」はその比喩かな、と。逆に言えばこの映画は、彼ら二人の非人間性(?)を、近親相姦をメタファーとして描いているとも取れる、とふと思った。だから何だ、って突っ込まれても、だけど何も分かりませんけど(ぉぃ

とりあえず、私的メモついでに話を簡単に整理してみると・・・

高校の頃学校で近親相姦やってるぼんくら姉弟みかけてチェ・ミンシクは噂垂れ流し→想像妊娠の末に姉様は自殺=弟ことユ・ジテはぶっちキレポンパッパラパー→監禁ビジネス会社に連絡→チェ・ミンシクは拉致られ15年間監禁→外に出たー!けど、催眠術かけられてた(ここからは全てユ・ジテの計画通り)→女の子と恋に落ちながら少しずつ犯人を追いかけ、謎を解く(「何故監禁したか」ではなく「何故解放されたか」が重要だ)→実は女の子は娘だった!!お、俺はコイツと同じ様に近親相姦を・・・しかも娘の処女を奪っちまった!?→うおおおお娘には、娘には、知はへはいへふへ!(舌が無いので喋れません)→再び催眠により、全てを白紙にした二人は・・・

で完、と、言う事かな?どーでもいいが、妻殺しの時効って15年程度なのか?

まず特筆すべきはオープニング。素晴らしい。唐突に映画が始り、とっとと監禁生活に移行する怒涛のオープニングで観客を一気に映画の世界にぶち込む。まさに拉致監禁の如く。さらにオ・デス(チェ・ミンシク)がようやく壁に穴を開けて外に出られるか、と思わせた所での解放。解放と同時に飛び込むのは太陽ではなく、チェ・ミンシクの眼球だ。ドキッとさせられる。

予告にも一瞬あるが、冒頭の自殺者が車に落ちる姿をバックにサングラス姿のオ・デスが微笑するカットがたまらなくカッコ良く、そして狂気に満ち溢れている。この地点でこの映画は作品全ての雰囲気を観客に植え付けている。失礼だが、とても『JSA』と同じ監督に見えない(あの映画は『戦火の勇気』のパクり臭い話だが、序盤での観客の飲み込み方が少々下手糞に思えた)。

そしてハイテンポでドンドンと話が前に突き進んでいく。ホント、すげーよこの序盤。序盤で飛ばしている為後半の失速は確かに否めないが十分な許容範囲であるし、何よりも後半になるにつれてユ・ジテの登場シーンが出てくる。この作品のユ・ジテの圧倒的存在感は彼の過去作品と比較して群を抜いており、話の失速感を十分に補っている。見事。

アクションシーンとしては、やはり監禁ビジネスのビルを突き止めた際の、廊下でのヤクザ数十名との格闘(乱闘)シーン。1カット横移動の圧倒的な撮影が見事で圧倒される。あんな物良く思いつくなぁ。ホント、チェ・ミンシクもよく演ったよ、このシーン。

全体的に見て、チェ・ミンシクの動きが鋭い。このオッサン、『シュリ』の時は「弱そうなオッサン(ぉぃ)」というイメージがあった(だってインテリ面のハン・ソッキュと揉み合いの格闘だぜ?)。さらに『ハッピーエンド』でダメ亭主やってるだけあって、本作のそのカッコ良さにとにかく痺れる。痺れる。痺れる。痺れ飽きた所で、ユ・ジテに痺れる。おい、俺をどこまで痺れさせるんだ!と叫ぼうとした所で痛烈なオチが待っている!

勘弁してくれってば・・・

壮絶な、痛烈な皮肉の物語。

自ら自発的に行っていたと思っていた「監禁に対する復讐」が、気が付けば謎解きに変わり、そして罪の反省へと落ち着く。「(チェ・ミンシク側の)復讐劇」と思わせて、実は「(ユ・ジテ側の)復讐劇」と言う構図は、正直読めなくも無い展開ではあったのだが、いやはや、あーゆー手口で復讐するとは。いや、天晴れだ。俺はされたくねーけど(笑)

最終的に犬(=獣)に成り下がってでもユ・ジテに媚び、それでも足りず舌を切り落とす(=もう喋りません、って事だろうね/ついでにここのシーンを指して「気持ち悪かった」とひたすら言い続けている客が大勢居たが、オメーらこの映画はソーユー映画なんだよ!と突っ込もうとしたけど単に俺が『殺し屋1』で免疫があるだけっぽいから舌を引っ込めて黙りました)。まさにそれは冒頭の「獣以下でも生きる権利がある」という台詞の伏線回収と、被害者(?)に対する謝罪なんだけど・・・

いやはや理不尽。倫理を破壊する。近親相姦がいけないのか、噂がいけないのか、監禁がいけないのか、復讐がいけないのか・・・単純な善悪論ではなく、とにかくそんな思考よりも、この異様な空気に陶酔。

最終的にオ・デスを生き残らせたのは、罪を背負わせて生かせる為じゃないかと思う。劇中どこかで「復讐しても、問題はその後だ」みたいな発言があった(気がする)が、要するにそれなんだと思う・・・多分。いや、良く知らんけど。ま、催眠術で記憶を消してしまったのは、予定外なのかな?

でも、逆にそれは、あの親子(記憶上ではただの男女)には痛烈な幕切れでもある・・・無論、第三者から見れば、だけど。

ま、とにかくレビューがまとまらんのだけど(←言いたい事ありすぎてホントにまとまらない)、実を言うと見終わった直後、何か一発しっくり来る物が足りなかったのも本音。何か分からんが、ま、ユ・ジテのカッコよさに免じて許そう。『セブン』レベル、もしくはそれ以上の異常な空気を生んだこの作品に最高の賛辞を送る。「コイツァ切れてやがる!」(←俺なりの賛辞)

どーでもいいけど『H』に引き続いて・・・・韓国って催眠術を犯罪に使うのが流行ってるんですか?

(評価:★4)

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