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[コメント] オペラ座の怪人(2004/米=英)

冒頭30分間の圧倒的な輝き。舞台芸術と音楽が完璧に融合した瞬間、スクリーンは舞台となって動き出し、緊張した空気が俺の肌を逆撫でる。映画の持つ醍醐味を徹底的に駆使した身震いする程最高の出だし。 2005年2月15日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







――っていうか、ファントムって何歳ですか?

拾われた時、拾った少女(=後のおばちゃん)と同い年ぐらいだったけど、大人になっても若々しい顔してましたけど?

オリジナルなんて全く知らない。『オペラ座の怪人』と言うタイトルは知っていても、ストーリーは殆ど知らない様な物。第一、ミュージカルが苦手なんだよ。だから見終わっても、俺は『ムーランルージュ』の方が面白いと思ったのが率直な感想。

だが、このスクリーンに映し出される圧倒的な映像美は、当に劇場、当に映画。当に映画化。圧倒的な世界が俺の目に飛び込んでくる2時間半。徹底的に、圧倒的に華麗で壮麗な美術と完璧に合った音楽が、俺の五感を刺激し、溜め息を禁じない壮大な美に、ただ俺は平伏するのみ。

オープニングのセピア色の画面から、シャンデリアが吊り上げられた瞬間にその画面が一瞬にしてカラーになり、全てが色づく。同時に流れる大迫力の音楽。あの一瞬の驚きと感動は、当に鳥肌物だ。俺は、その完成度に音楽と映像が100%完璧に融合した瞬間、圧倒的な美がそこに生まれる。映画、映画だ、そう、俺が見ているのは当に映画だ。『オペラ座の怪人』と言うタイトルの劇を映画化した映画、まさにそのマンマ。ストレートにこう言える。オリジナルは見た事無いが、言えるぞ、俺は。コレは当に映画化だ。

舞台を見に行くには気が進まずとも、映画館なら気楽にいける。その、純粋な大衆娯楽の場に「オペラ座」が壮大なスコアと共に登場する数秒間の輝きは、映画と言う枠を超え、もはや舞台と化した。その圧倒的な迫力は巨大な波となって観客を飲み込み、スクリーンと言う名の渦に連れ込む。おお『パーフェクトストーム』!!!!!

そして続くクリスティーヌの歌うアリアの素晴らしさに完全にノックアウトされる。ああ、何たる奇跡。

――と、熱狂した俺を放置して物語は進むのだけど、今ひとつ物語そのものには魅力を感じない為、見ている間退屈になってくる。率直に言うと、本作、開始30分と終盤30分以外面白くなかった。

有名劇を手軽に映画館でこうもゴージャスに見れると言うのは確かに嬉しい事なんだけど、結局舞台美術や音楽などの素晴らしさばかり目立って、映画として、ストーリーが詰まらない。その圧倒的な美の前に、話はあまりに凡庸で中途半端すぎる。コレでは均衡が取れない。特に俺みたいにミュージカル苦手な人間には。

ま、ぶっちゃけちゃうと、音楽も――あくまでこれは好みの問題なんだけど――身震いするほど凄い曲もあった反面、どーでもいい程のれない曲もあったりと、様々で、サントラが品薄になるほど売れている、と言うのも納得できる反面、少し納得できない面もある。

第一、この映画のストーリーってさぁ、「変態男に付きまとわれる美女の下にボンボンのハンサムが登場する」っていう三角関係な訳だけど、この三人、それぞれ心理描写がおざなりで拙い。コレでは感情移入も糞も無い。正直、面白味なんて感じないし、眠かった。

「音楽を通して語っている」のは分かるのだけど、あくまで「映画」なのだから、それなりにやる事はやって欲しい。まぁそこまで求めるのは酷な気もするが。

美男美女が出会って恋に落ちる。そこから物語が展開する。コレは確かに映画尺で物語を作るとすれば正しい方法かもしれないが、そこにある程度の説得力を持たせなければその恋はスクリーンの中で一人歩きする。『ロミオとジュリエット』にしてもそうなのだけど、結局「悲劇的なシチュエーション」と言う極限状態に於ける「二人」を描きたいだけに思えるんだよね。

シチュエーション以上に大切なのは「ロマンスに於ける感情」じゃないの?何ていうか「愛」と言う感情をこぎれいに謳い過ぎている気がする。

本作は、心理描写が希薄な為、その結果として主人公女性がどっちつかずの女に見え、何をやりたいのかさっぱり分からなかった。妄想壁と気狂いピエロと美男子公爵に悩まされる女性?なんか少女漫画みたいっすね。

で、ようやくラスト30分辺りで初めて「ファントムの奇形?としての悲しみ・孤独」とその狂気が語られ始める。そこでようやく、ドラマがドラマらしくなるのだ。おいおい、2時間半何やってたんだよ、って話ですよ。歌と踊りで物語進めて感情はおざなりかよ、と。

ヒロインの洗脳されっぷりも中々壮絶だし。何か、「映画化」であって「映画」になり切れていない印象。

あ、でも、俺、ファントムが鏡を割りまくるシーン、ラストシーン、クリスティーヌの墓に真紅のバラが置いてあるシーンでは、モロに泣きまくってましたけどね(涙もろい

(評価:★4)

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