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[コメント] クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦(2002/日)

お見事。本当にお見事。 2003年3月30日ビデオ鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







とてもガキ映画とは思えない面白さ。一大スペクタクル。素晴らしい。

戦国時代の「戦争」という訳だが、別に血なまぐさく見せていない所は子供への影響をきちんと配慮している。だが、そんな事を配慮するなら、初めから戦国時代などをを舞台にしなければよい。いちいち、描写に神経注いでまで、こんなメロドラマをやる必要性はあまり感じない。タイムスリップという複雑なものをすっきり見せ、手堅い演出等で場を盛り上げる技は良い。ありがちな『ロミオ&ジュリエット』的ネタの恋愛に、しんのすけ家族のギャグ等で退屈させずに見せきる。

しかし「もののけなんとか」みたいにつまらなくなく、きちっと見せきり、幅広い層が楽しめる恋愛を盛り込む。確かに「戦場」と「身分の差の恋愛」や、「戦国時代」等、幅広いキーワードを用いたこの映画は、純粋に子供向け映画とは呼び難く、武士の使う言葉等も、子供には理解できないだろう。「案ずるな(心配するな)」などと言われて、理解できる子供が何人居るだろう?

だから、子供向け映画としては、さほど評価できないが、エンターテイメントとしては一級品。宮崎なんとかのアニメや、そこらのハリウッドスペクタクル超大作より遥かに面白い。ヒロシがあの健康器具(なぜあそこにもって行ったのか不明)を駆使して戦う姿など随所に散りばめられた、時代のギャップを生かしたギャグ。しかも、そのギャグに特に誰も突っ込まない。「なんだ、それは?」と言うギャップの使い方を最小限に抑えているし、登場人物皆が「未来から来た」という事をさっさと理解してしまっている辺りが「クレヨンしんちゃん」的で見ているほうも安心できる。

だから、最初から最後まで中だるみなんて言葉を一切感じさせずに楽しめる作品なのだ。そして、恋愛の演出も手堅く、定番ネタでぐいぐい攻めてくる。ただ、問題なのはラストで男を殺した所だろう。理由付けもきちんとあり、死の理由にも納得行くものだったが、妙に「お涙頂戴」の演出になり過ぎており、あの演出には多少の嫌悪感を感じた。男を殺さず、姫と結ばせておけば、もっと爽やかに終われたのではないだろうか?

しかし、まさに盛者必衰の理の映画だな、これは。この映画を放送した放送局は確信犯だったのか?この現在の世界情勢に対する何かを伝える為にこの映画を放送したのか?この映画では結局、戦う事の愚かさ、人を殺す事の無意味さ等を訴えている感じもある。

きちんとそういうメッセージ性を含んだ映画だし、見ている間退屈もせず、下品なのに爽やかなギャグにひたすらにやけていた。悪い所は何箇所も見つけた。だけど、定番ネタで攻め、「死」という最大のエンターテイメントに俺は涙してしまったんだ。っていうか、主人公(?)を殺してしまうとお涙頂戴に走りすぎるが、涙腺のゆるい俺は、池で抱き合っている二人を見て、その地点ですでに泣いていたんだよ。しかも、確かにラストの男の「死」には嫌悪感を感じたが、あれもあれで良かったかとも思う。不思議な絆で結ばれた人が目の前で死ぬ。しんのすけにとって、彼は親父とミサエの次に英雄(ヒーロー)だった、そんな男が目の前で死ぬ。そして、その死に対し「きんちょう(漢字わからん!)」する。そして、しんのすけはまた一つ大きくなる。だから、どちらでも(殺しても殺さなくても)構わなかった、という感じもなんとなくする。

だから、多少強引なのは目を瞑る。次回作は、本当に子供向け映画に戻っている感がある。その道の方が良いと思うが、たまにはこういう映画を作ってくれると、自分は嬉しい。っていうか、この監督は普通のアニメーション作れば、凄い面白いの作れるんじゃないのかと、ちょっと思う今日この頃。

けどまぁ、殺さないに越した事は無いけどねぇ。

(評価:★5)

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