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[コメント] 世界の中心で、愛をさけぶ(2004/日)

「恋人が死んでしまって悲しいです。」というだけの安っぽい映画かと思っていたが、 ちょっと捻ってあって感心してしまった。……って、おい。原作は、まさにその安っぽいストーリーではないか。あの原作から、これだけの映画をつくったのは、評価できる。
空イグアナ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画を観ながら「よくあるストーリーだな。」と思うようになったのはいつからだろうか。着々とオヤジになっているようだ。

この映画も予告だけ見て、「どうせよくあるストーリーだろう。」と高をくくっていた。恋人が病気になって、辛いです。恋人が死んでしまって、悲しいです。それだけの物語だと思っていた。

観てみると、なかなかきれいな映像ではないですか。島から戻ってきて、森山未來が車を追いかけるところなんてすごかったね。ワンカットで撮っちゃったよ。脚本もうまくできている。ウォークマンの交換日記をキーとして、現在と過去がつながる。これがよい。これがなかったら、ただの「恋人が死んで悲しいです。」っていう安っぽいストーリーになってしまうもんな。

……って、後から原作を読んでみたら、まさに何のひねりもない安っぽいストーリーではないですか。

そうか、大沢たかお柴咲コウのドラマは映画のオリジナルだったのね。原作では、過去とのリンクどころか、ウォークマンそのものが登場しない。出てくるのは、普通のノートに書く交換日記。(映画のウォークマンには、でっかく「SONY」と書いてありましたね。たぶんスポンサーなんでしょう。だからといって別にどうってことはないんですが。)

流行語にもなった「助けてください!」という台詞。あれも原作では、全然インパクトがない。本当に、ただの、困ったにことになったから周囲に助けを求めたってだけの台詞だ。それが映画では、人生に絶望した人間の叫びになっている。映画がなきゃ名台詞にならなかっただろうね。

映画のできはあくまで映画で決めるものなのでしょうが、原作を読めば読むほど、監督が頑張ったことがわかるんですよ。

ケチをつけるところはたくさんあります。その辺は、すでに皆さんが書かれているとおりです。長澤まさみがどうして森山未來を好きになったのかわからないし、柴崎コウが大沢たかおを許せるとも思えない。時代設定も、八十年代とは思えない。姿を消した柴咲コウがテレビに映り、車に轢かれそうになるところなんて、思い切り引きましたよ。失踪した婚約者が偶然テレビに映って見付かる、というだけでも御都合主義なのに、その上、あわや交通事故、という場面が中継される、なんてのはやりすぎでしょ。

「婚約者の過去を知らないなんて……。」という批判もありますが、それは私は許せます。新しい恋人ができたとき、古い恋人の話をベラベラと喋るもんではないでしょう。柴崎コウだって、嫌な思い出なんだから、気軽に話せませんよ。お互い、辛い過去は黙ってたんですよ。フィクションとして許せる範囲です。批判するのは野暮というもの。『猿の惑星』にツッコミを入れるようなもんです。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)すやすや[*]

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