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[コメント] 鉄路の闘い(1945/仏)

抵抗
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







シャロンでの臨検からから始まり、続けて描かれるのは、機関車の中とか荷物室に隠れて移動する人達.おそらくゲリラでしょうが、ユダヤ人かもしれない.いずれにしろ、占領地区と自由地区に分断されたフランス、その地区を移動する人達を鉄道員が手助けしている.二つに分断された地区を往き来するのを助けるとは、国家の統一を守る行為、占領政策に対する抵抗運動の基本はこの点にあった、こう言ってよいのでしょう.「水を入れろ」「もう済んだ」、「とまれ」「とまるから下りろ」これらの行為、言うことを聞かない、これが反抗なのね.

サボタージュに対して、ドイツの将校が鉄道員を集めて演説するけど、通訳の男、あまり積極的には伝えなかったみたい.嫌々やる、これも反抗. 反抗の対になる言葉は服従.反抗とは服従しないこと、命令に従わないことなのだけど、この点が、この映画、一番気を使っている点なのかもしれない. 爆薬をしかける、脱線、転覆させる、様々なのだけど、例えば、駅員にしても初老の機関士にしても、皆が皆、自発的に、ドイツ軍の輸送を妨害するのに協力する.逆送するクレーンの列車を脱線させようと、ポイントにかい物をするけど、何も知らない工夫が勝手にハンマーで叩くには、自発的と言う表現.反抗とは命令されてすることではない.

少年と言ってよい男の子が、中年の男の手を握る.外れた弾が壁に跳ね返る.手を握り締めたまま少年が倒れる.自分の死を覚悟をする中年の男の顔.ゆらゆら上がる黒煙、最後の銃声. 抵抗、この言葉を考えるとき、無抵抗のまま銃殺になるシーン、この出来事がどのような意味を持つのか、必然的に考えさせられる.銃殺命令に反抗せず、命令に服従して撃ち殺されることは、命令に服従すること、反抗しない事が、人を撃ち殺すことと同じであることを意味する. 鉄道輸送に関わることは、ドイツの軍事物資の輸送にかかわることであった.反抗しない事は、服従する事は、ドイツの戦争に加担することである.無抵抗のまま銃殺される、抵抗しようもなく銃殺される、この出来事が戦争であり、抵抗しないことは戦争に加担する事である、と、端的に物語っている.だから、例え無意義であれ、皆が汽笛を鳴らし、抵抗することへの連帯を呼び起こす.なせ抵抗するのか、それは戦争に加担したくない、戦争に反対するからこそ抵抗するのだ.

こう考えると、ゲリラが装甲車を襲撃する出来事は、どう観ても戦争と言える.クレーンの列車を襲い、ドイツ将校を捕虜にし、列車を逆送させた.爆破につぐ爆破、装甲車の出現は必然的なものであったかもしれないけれど、秩序を保つ事を忘れる行為は、一定の秩序が失われたときは、反抗ではなく戦争になる.あるいは、武器を取って武力と戦えば戦争である、と言うべきなのでしょう. 最後の方になると、事は急を要する、だんだん荒っぽい手口を使うようになる.けれども、これは状況に応じた秩序と言ってよい.事は急を要するとは、今ここで思いきった手を打てば、戦争を終結させることが出来るけれど、ドイツ軍の補給を許せば、戦争をより長引かせ、必然的に犠牲を増やすことになる、と言うことなのでしょう. 結果的に、鉄道輸送は完全に停止し、同時にドイツ軍も敗走した.

もう一度、最初の字幕の言葉の最後の部分.鉄道員達は、ドイツ軍の敗走に大きく貢献したのだった、つまり、武器を取って戦ってドイツ軍を打ち負かし、戦争に勝ったのではない.敗走に貢献したとは、戦争を終わらせるのに貢献した.戦争に反対し戦争を終わらせる努力をした、これが鉄道員達のレジスタンスなのね.

(評価:★5)

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