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[コメント] 大いなる幻影(1937/仏)

恋愛と友情
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







日本の江戸時代までは戦争をするのは武士の役目でしたが、時代が明治に変わると共に、富国強兵のもと一般民衆が戦争に駆り出される時代に変わりました. 第一次世界大戦は、オーストリアの皇太子がサラエボで暗殺されたのを契機として、ヨーロッパの各国が次々に国家総動員令を発動し、ヨーロッパ全土に拡大して行きました.ちなみになぜそうなったかは誰にも分かりませんが、結果として貴族社会が崩壊したのは、この映画に描かれるところです.そして、日本の江戸時代の終結、封建制の崩壊と同時に、戦争の役目が武士から一般民主に移行したのと同じように、第一次世界大戦のさなかに、ヨーロッパにおいては戦争の役目が貴族から一般民衆に移行しました.そうした事実を背景として、迫り来る第二次世界大戦を間近に意識せざるを得ない状況において、一般民衆が戦争をどのように捉えるべきかを描いたのがこの映画、と言ってよいでしょう.

命をかけて国を守る、第二次世界大戦において、玉砕と言う名の下に多くの人命が失われましたが、結果としてそれが国を守ることになったかと言えば否、全くの無駄死にに過ぎませんでした. 日本の武士と同様に、ボワルデュー大尉、ラウフェンシュタイン大尉に描かれるヨーロッパの貴族にとっても、命をかけて国を守る、国に仕えるのが彼らの役目であった.けれども、ボワルデュー大尉が命をかけたものが何であったかと言えば、それは人間同士の友情.同じ貴族同士、ラウフェンシュタイン大尉がボワルデュー大尉に求めたものと、同じものであり、その事によってラウフェンシュタイン大尉は自分の愚かさを悟ったと言って良いでしょう. 「戦争が終わると共に貴族社会も終わる」このラウフェンシュタイン大尉の言葉は、貴族社会が終わっても、一般民衆が戦争の役目を貴族から引き継いではいけないのだ、こう言っているのですが.

さて、人間として命をかけて守るべきものは何か.それは、マレシャル中尉とユダヤ人のローゼンタール中尉の逃避行を通して描かれる. ユダヤ人に対する虐待はナチだけの行為でなく、当時のフランスにおいても行われたことであり、それもやはり映画に描かれています.フランス人とユダヤ人との友情、ドイツ人のエルザとの恋愛は、当時の日本に当てはめれば、日本人と中国人あるいは韓国人との友情、日本人とアメリカ人との恋愛を描いていると言えます.

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)寒山拾得[*] moot ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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