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[コメント] チャップリンの殺人狂時代(1947/米)

愛と殺人
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







殺人、この映画では、一つには、無差別に騙した女から金を巻き上げる手段、今一つは、武器を製造して戦争で無差別に人を殺すこと、そして、この二つの共通点として、どちらもビジネスである、と描きました.

愛、この映画ではどの様に描かれたでしょう.単純、明瞭、強いものが弱いものを守ること、として描かれています.

いかにも死体を焼いているのであろう、もくもく黒煙を上る焼却炉は殺人というビジネス、足元の毛虫を踏みつぶさないように拾い上げるのは、愛.これだけのシーンが映画全体を物語っていると言えます.

足の悪い妻と幼い子供の家族、家族を養うために、この男は、ビジネスとして殺人を繰り返しました.

薬の実験のために町で拾った女.話を聞けば、戦争で負傷した夫を養うために、借りたタイプライターを質に入れて捕まった.自分と同じ、強いものが弱いものを守る、愛があったので、この男は薬の実験をやめた、殺すのをやめたのですね.

不況の風が吹きまくり、破産し、守るべき妻も子も亡くしてしまった男.他方、武器製造にかかわる会社の社長の愛人となって、幸せを掴んだかに見える女. 力になりたいと渡された女の名刺を破り捨てて、もう一度レストランに戻って行く男、自首する場面が、一番重要なことを語っているのでは.

男から女への言葉で、この映画をまとめてみよう. 私は、足の悪い妻と幼い子供の家族を養うためには、女を騙して金を巻き上げるビジネスもやむを得ないものとして、殺人を繰り返してきた.あなたも、戦争で負傷した夫を養うために、借りたタイプライターを売り払っても、許されることであった.この点で、あなたも私も、同じであると思ってきたのだが.

けれども、私は、今のあなたに再び出会って、自分の間違いに気づいたと言える.今のあなたは、武器を売った利益、すなわち、戦争で人を殺すことによって得た利益によって、幸せな生活を得ているのだ.あなたにとって、戦争で負傷した夫を守ることが愛であった.けれども、戦争で人を負傷させることによって得た利益で掴んだ幸せは、愛ではなく、はっきり悪と言わなければならない.この点では、私も同じであった.人を殺すことによって得た利益によって、家族に幸せを与えてきたのだから.

この男、女と再会することによって、自分の間違いに気が付いた.だから自首しました.そして、もう一つ言えることは、強いものが弱いものを守ることが愛ならば、戦争とは強いものが弱いものを殺すことなのです.

「一人殺せば悪党で、100万人殺せば英雄です」この言葉、やはり書いておかなければならないでしょうか. ビジネスとして何人か殺した自分が許されないならば、ビジネスとして100万人殺す大量殺人兵器を開発することも、許されない.

この映画の撮られた2年前には、広島、長崎に原子爆弾が投下され、広島では一瞬にしておおよそ10万人が、その年の終わりまでに14万人が亡くなりました.(http://www.csi.ad.jp/ABOMB/index-j.html参照)

なぜ100万人なのか.原子爆弾でおおよそ10万人の人間が一度に死んだ.その原子爆弾を含め、兵器の開発がどんどんエスカレートして行こうとしている.今度戦争が起これば、おそらく一度に100万人殺す兵器が使われるであろう、だから100万人と言ったのではないか.原爆の開発、製造を批判していると思える.

だけど、映画として良い映画かどうか、私は?. 自分がこの映画から学ぶものがあるかどうか、無い. 今、現実に、アメリカがアフガニスタンで戦争を行っているが、この映画によって、その行為を批判することが出来るかどうか、出来ない.

批判するとは、間違いを正すことだと思うけれど、この映画、当時のアメリカを皮肉ったに過ぎないように思える.

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