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[コメント] はつ恋(1999/日)

とても素晴らしい作品だと思う。でも、たとえ娘でも踏み込んではいけない領域があるのでは?
NAMIhichi

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私は、母親を想う気持ちなら誰にも負けない。だから主人公が母親を慕う気持ちに容易に感情移入できた。この映画はそれだけではなく、女は過去への旅、男は未来への旅をゆく。とても切なくて、同時に温かい気持ちにさせられる。夜桜はとても綺麗だったし、父親のストーカーなみの求婚話もよかった。娘がお膳立てした再会ではなく、病室でしかもすっぴん、という再会の場面も現実的でよかった。何より、母親役の原田美枝子がとてもよかった。

娘が介入するという無理な設定さえなければ、とてもいい作品だと思う。この設定に対する違和感が最後までどうしても拭えなくて、とても残念だ。

母親のことが大好きな娘なら、主人公みたいなことはしないのではないだろうか。たとえ甘えたっぷりの十代でも。

娘だから、何をされても母親は許す、娘と母親の関係はそういう甘ったるいものだと世間では思っているのかと不思議だ。娘がどんなに若くても、そこはやっぱり女と女。そこには遠慮ってもんがいつでもある。それは相手によって、恐れの気持ちだったり、敬う気持ちだったり、色んな感情が絡んでいる。どんな関係でも、ここはノータッチでお願いしますという部分があるのだ(女同士じゃなくたってそうだ)。娘というのは、いつの間にか母親を一人の女として見るようになるもので、それは確かに主人公くらいの年齢の時が多いし、主人公のそういう気持ちを前提として、あの行動が導き出されたのだと思う。でも、母親を一人の女として捉え始めたなら、母親がその男と逃げてしまったら、とたとえありえなくても、そこまで遠慮なく考えるのが娘ってもんだ。娘と母親だからこそ、そういうところは容赦がない。

母親の方も、少し違和感がある。私が母親になって、似たようなことを娘にされたら、たとえどんな関係でも、相手を尊重しているなら人の人生にむやみに踏み込むようなことはしないように、と注意する。若い娘を残して死ぬならなおさら。

女の子なら、特に思春期の女の子なら、こういうことをするだろう、という世間の思い込みみたいなものがこの映画にはある。そもそも、女の子はそういうことをする生き物だって信じたくて、枠にはめているのは男だ。しかも女の子はみんな、そういう思い込みを教えられて育つから、たちが悪い。

(評価:★3)

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