チョウ・ユンファとシルヴィア・チャンという二大スターの競演も素晴らしく、それぞれが置かれた立場の中で、子ども、そしてお互いに対して揺れ動く心境がとても繊細に描かれている。

細かいディテールにも感心させられた。特にユンファがチャンを久しぶりにバイクに乗せるシーン。ちょっと吹かして体をつかませ、泥水の中を平気で走っていくところなんかは何でもないシーンだが印象に残ったし、何度も出てくる階段の存在感も捨てがたいものがあった。運動会の三人四脚や、レース場に駆け付けたチャンの腕に光るブレスなども強い印象を残す。ボロアパートの風情もよく、このあたりは初期作品とはいえさすがにジョニー・トーの作品だと思わせるところであった。

ただ最後のレーサーとしての復活のシーンはやはり唐突といった感が否めず、せっかくのラストが悲劇というよりも呆気にとられる感じで終わってしまうのが惜しい。あのような形で終わらせたいのなら、それとなくそういうことを予感させる前振りがほしかったし、個人的にはやはり３人が幸福へと向かうラストであってほしかった。