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[コメント] 彼岸花(1958/日)

当時の観客が想像した「小津のカラー作品」のイメージを壊すことを意識したかのような、過度な華やかさが印象に残る。大きな柱である佐分利信の父親像が受け入れられるかどうかで好き嫌いが分かれそうな作品。
ナム太郎

白黒からカラーへの移行という違和感だけでなく、最も印象に残るのが早口の関西弁でまくし立てる山本富士子浪花千栄子だということからも分かるように、この映画はそれまでの小津作品とはまた違った味わいを見せる、いわば異色作と言ってもよい作品である。

別にこの過度な華やかさが嫌というわけではないのだが、大きな柱である佐分利信演じる父親がどうも受け入れ難く、田中絹代の名演や高橋貞二の楽しさをもってしてもその思いが拭いきれないところが何度観てもひっかかる。だから作品自体に今ひとつ入り込んでいけないし、そのせいか、どうしてもそのきらびやかな表面的な部分の印象ばかりが残る作品になってしまっている気がするのである。

だから、初めて小津の映画を観るという人が、例えば私と同じような感想を持ち、これ1本きりで彼の映画にサヨナラを告げようとしているならば、これは違うんだということを強く訴えたいし、逆に初めてでこれを気に入った人がいるとすれば、もっともっとたくさんの作品を観てほしいと思うのである。

とは言っても、有馬稲子山本富士子など、美しいものが美しく撮られているという点ではやはり出色の作品ではあるのだが…。

(評価:★4)

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