[コメント] センチメンタル・アドベンチャー(1982/米)
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この作品を制作していた頃のクリント・イーストウッドの年齢は50歳前後だったと思われるが、そういう人生の節目に差し掛かった彼が試みていたのが「銃を振り回す」役者としての己のイメージからの脱却であったことは想像に難くない(事実この作品で彼が手にするライフルに弾が入っておらず、そのせいで安酒場のオバチャンに殺されかけるというシーンの楽しさと言ったら!)。そんな彼が自らを「しがない流しの俺」だと唄い、「それでも俺にはギターと夢がある」と我が子を引き連れて旅をするこのロードムービーの素晴らしさには心底涙を禁じ得ないものがある。
彼らとともに旅をすることになった老叔父(ジョン・マッキンタイア)が孫(カイル・イーストウッド)に語る「一文無しになったが、俺たちは土地を買ったんじゃない。夢を買ったんだ」という台詞は、たとえそうなってもいいじゃないかという当時のクリントの心境を代弁したものだったのだろう。そして彼は少なくともこの作品では新たな富を得ることはなかったが(事実日本でも一部の地方で2週間程度公開されただけだったと記憶している)その後の実績、そして年々高まっていくこの作品への評価というものを考えると、彼は自分の本当の夢を買うことに成功した映画界でも稀有な存在だと言えよう。
ラスト、若い2人が歩いて行く姿にかぶってラジオから流れる『Honkytonk Man』(この作品の原題である)ではないけれど、例えばこれから先彼が天へと旅立ったとしても、彼の作品は永遠の輝きをもって上映され続けることだろう。そしてこの作品の輝きもまた永遠なのである。
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