この映画の本筋は、ジャマールがラティカを取り戻す物語、つまりはラブストーリーであるはずなのだが、そのきっかけとして出演したクイズ番組の問題及び解答に彼自身の半生を重ねるというサブストーリー（と、あえて呼ぶ）がよほど気に入ったのか、監督のダニー・ボイルは、むしろそちらに重きをおいた演出を施しているように見え、肝心のラブストーリーの方がおざなりになった感が否めない。だから本来最大の盛り上げどころであるはずのラストの抱擁はもちろんのこと、あれほど頑張ったはずのクイズ場面のクライマックスもが（こちらは本筋ではないのだから当然といえば当然なのだが）盛り上がらないという、最悪の結果を招いてしまっている。

また細部においても世評ほどには優れていると思えなかったというか、むしろカメラワークや音使いにはもう少し慎ましやかな芸はなかったのかと思ってしまったし、役者に関しても素人に「演技」をさせるほど見ていてつらいものはないわけで、決してつまらないわけではないが、あまり感心できるところはなかった凡庸な作品というのが正直な感想である。