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[コメント] 私は猫ストーカー(2009/日)

正直、猫にはうんざりしているんです。
ナム太郎

実はうちの近所に野良猫に餌をあげている人がいる。というわけで、一定の時間その家は猫屋敷と化すわけなのだが、食後それらの猫がどこに移動するのかというと、それが我が家なのである。それは何故か。実は我が家の庭には砂利があるのだ。それも猫が糞尿を放つのにうってつけの。というわけで、うちの庭は猫たちのトイレ代わりとなっている。それがまた臭いんだよね。もうなんとかしてくれ!と叫びたくなるくらい。

そんな典型的なご近所トラブルに巻き込まれていることもあり、正直自分は猫なんてうんざりなのである。だから本当は、こんな猫ばかり出てくる、しかもその猫をストーカーしようなどという映画なんか観たくはなかったはずなのだ。しかし、たまたまこれを薦める人があり、嫌なら途中で観るのをやめればいいやくらいの気持ちで観はじめたら、これが滅法面白い。まずはこの時代に劇映画をスタンダードで撮ってしまおうという心構えがよいし、何よりこの映画、猫を追いかけるものだから、当然のことながら人間目線で見るところの「路地」と言われる所へと入っていくのだが、その本来は物言わぬはずの「路地」が、とうとう自分たちの出番がやってきたかと言わんばかりに雄弁な画力をほとばしるのである。

そうなるともうあとは、「次はどんな路地が出てくるのだろう」という興味で画面から目が離せなくなり、そこにいくら自分が嫌いな猫が映っていようとも全く気にならなくなり、挙句の果ては、第二の舞台である古書店の通路ですら魅力的に思えてくるのだから、これはもう本当に困った体験であった。

思えば人は、知らず知らずの間に人生における路地に足を踏み入れてしまっていることがあり、そのことに大きな不安感を抱いてしまったりする生き物である。しかし、おそらく猫にはそのような概念はなく、路地であろうと屋根であろうと歩けるところを歩いていればまたいつか気が付けば元の道を歩いていることもあるさと、自由きままに我が道を行くのだろう。そう思うと、まだいまだに猫にはうんざりとはしつつも、猫ストーカーの気持ちが決して分からぬ自分ではないなと思う今日この頃なのである。

***

それにしても本作の星野真里と、彼女が描く絵や字はいいですね。

(評価:★4)

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