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[コメント] リバティ・バランスを射った男(1962/米)

考えてみれば、本作の前年には『ウエスト・サイド物語』が公開されていたわけだ。これはもうフォードが西部劇の終焉を描いても仕方ないことだったのだろうなと、そんな事実ひとつをとってもそう思えてしまう。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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しかし、そんな背景は置いておくとして、本作が何物にも代えがたい傑作であることは、いつの世も変わりない事実であろう。

60年代に入った当初に公開された本作で何より興味深かったのは、40〜50年代を代表する「アメリカ映画の顔」であったジェームズ・スチュワートジョン・ウェインが競演をし、劇中においては、いわゆる現代劇にて人気を博したスチュワートが生き残り、西部劇の顔であったウェインが1人寂しく死んでいったという物語が、同じく西部劇の父たるジョン・フォードによって描かれたという事実である。このことからも本作がフォード自ら西部劇というジャンルを殺しにいこうとした映画であることは明白なのだが、加えて最初と最後が劇中にもあるように西部を大きく変えた鉄道のシーンであるところが、思い返しただけでも泣けてくるところである個人的には大きなツボであった。

また本作におけるこの両雄の素晴らしさといったら、彼らの再度の競演となった『ラスト・シューティスト』と並ぶ(いや、『ラスト〜』のほうが「本作と並ぶような」と表現すべきなのだろうが…)ほどであるのだが、本作ではここにヴェラ・マイルズとの楽しくもどこか物悲しい恋物語が展開されるのだから堪らない。加えて陰影の効いた撮影や音楽(「ABCの歌」ってこんなに感動的だったっけ?)にも大いに心惹かれるところがあるのだから、もうこれ以上本作に何を求めようというのか。

またこれを見ると、ドン・シーゲルによる前述の『ラスト・シューティスト』が、まさにとどめの一発であったことをさらに深く思い知ることができる。そして本作では決して死体であるところを見せなかったウェインの生き返りこそがシーゲルの弟子たるイーストウッドなのだろうと個人的には思っているのだが、そこまで言及するとそれは言い過ぎというものだろうか。

(評価:★5)

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