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[コメント] マリリン 7日間の恋(2011/英=米)

個人的には「ミシェル・ウィリアムズエマ・ワトソンを見る映画」ということでいいと思っている。
ナム太郎

本作は、コリン・クラークという実在の人物による『王子と踊子』の舞台裏をめぐる2冊の著作がベースとなっているとのことで、そういう意味では舞台劇をベースとした格調高い演技をよしとするオリヴィエ卿とただ感性のままに演ずるモンローとの確執や、薬に頼らざるを得ない生活をおくっていた当時の彼女の姿が赤裸々に描かれているところにも確かに興味を惹かれた。また、細かいところからいうと、大御所ジュディ・デンチのさすがの存在感や、ミシェル・ウィリアムズ同様にオリヴィエ卿という難役を堂々と演じ切ったケネス・ブラナーの好演なども十分賞賛に値するものだと思った。

しかし、それ以前に本作は、そのモンローを演じたウィリアムズの魅力が画面の隅々に満ち溢れており、したがって途中からは彼女のことばかりが気になり、この時のモンローがああだったこうだったなどという回想めいた物語などどうでもよくなってしまう困った映画だというのが個人的な感想である。それほど本作の彼女には、役になりきった者にしか出せない不可侵のオーラが漂っていた。

特に好きだったのは、車の座席に隠れてコリンとの密会を果たすシーン。それが見つかってまた隠れようとするシーンの可愛さには本当にまいった。また、最後のバーでのシーンの彼女が見せる思いの、あの絶妙の距離感。これも見事としか言いようのないものだった。

さらには、これは個人的な思いからそうなったのかもしれないが、主人公の青年に思いを寄せる端役でしかないエマ・ワトソンが、思った以上に印象に残った映画でもあった。彼女には今後も良くも悪くも『ハリー・ポッター』の影が付きまとうのだろうが、本作に関しては、その殻を破ろうと頑張りつつも、そこに余計な頑張りが見えず、自然体の彼女の姿があったことには安心と感動を覚え、これからの彼女もしっかりと見守っていきたいと思えたのは嬉しい誤算だった。

最後に監督であるサイモン・カーティスの演出には、取り立ててこれという特徴は見られなかったが、俳優の力を信じているのであろうことは容易に受け取ることができ、個人的には余計なことをせずにその力を信じ切ったことに好感をもった。

(評価:★4)

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