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[コメント] アニー・ホール(1977/米)

自分が初めて接したアレン作品は、この『アニー・ホール』であった。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







もちろんオスカーの作品賞を受賞したあとに観たわけだが、非常に洗練された素晴らしい作品だとの感想を抱いたものだ。

というわけで、彼に興味を持った私は、その後、『バナナ』、『SEXのすべて』『スリーパー』、そして『愛と死』と、彼がそれまでに発表した作品を追いかけて鑑賞した。しかし、そこで私が目にしたものは、ギャグ、思想、嗜好等にやり過ぎ感と唯一無二の個性をも感じるという、決して一般受けすることのない、いわゆるカルト的な作品の数々であった。正直言って非常に驚いたが、どこが違うのかと冷静に考えたときに、個人的には、それはカメラと舞台だということに気付いた。映画監督としてのアレンを変えたのは、ゴードン・ウィリスとの出会いと、彼のホーム・グラウンドであるニューヨークを舞台に映画を撮るんだという決心であったと私は思っている。加えてそれまで演技をさせられている感が漂っていたキートンの見事なまでの開眼。これらの要素が見事に重なり合った奇跡。

いやいや、自分たちには元々これだけの才能があったのだと言われれば素直に頷くしかないのかもしれないが、しかし、それだけでは終わらぬ映画の魔力を感じる1本であることも事実。そして魔力といえば、本作はキスの魔力に覆われた映画であるようにも思う。劇中、アレンキートンが交わす十数回に及ぶキスシーンの素晴らしさ。思えばクライマックスの回想シーンやラストの締めくくりもキス、キス、キスである。それらの光景が、ニューヨークの街並みに溶け込んだとき、それは確実に魔力へと化したように思う。

いずれにせよ、本作がアレンキートンの確かな分岐点であったことは違いない。そしてそこから数十年が経った今も、その成功を土台として輝き続けている彼らは、本当に素晴らしいと思う。

(評価:★5)

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