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[コメント] 初恋のきた道(2000/中国)

初恋の来た道 2000年 中国
いくけん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







初めての恋だから人は一途になれる。一心不乱に求めて行く。身を焦がす。道なき道を駆け抜けて行く。

一台の馬車で、スクリーンに拡がる一本道を、都会の町(画面のムコウ)から山奥の村(画面のコチラ)に男は来た。男は美しい調べを奏でる。読むこと、書くこと、新しい文明の利器を説いて いた。女はその目新しさにこころを奪われた。夢中で吸収した。その色彩は虹色、秋の山々の 彩りのカラー。

新しい便利な文明の利器。今まで無知だった純粋な人々は、夢中で求める。急速な経済発展、山村の過疎化、環境破壊、拝金主義、そのベクトルは人類の性(サガ)。

男は一旦、村を出た。女は追いかける。一本道の秩序さえ破り、野原を超え、道なき道を直向(ひたむ)きに走っていく。

愛の篭った秩序たるべき、磁器の茶碗は割れ、豊饒なる大地の恵み、餃子(あの騒動との何たる一致)は廃品と成った。もう元には戻れない。幸せの象徴たる虹色の髪飾りは、ムコウにも一本道にも無かった。村(ココ)のしかも家の入り口にあった。豊かな昔ながらの共同体の前にあった。

女は未だ男を待つ。降り積もる雪の中を。いつのまにか雪は降り積もり、色彩はモノクロ、季節は厳冬、雪一色。

ムコウで死んだ男を、老いた女はコチラに歩いて連れて帰りたいと願った。その考えは正しい。しかし金で葬列を繕い、葬列の後ろには多くの自動車と排気ガスが連なる。女の自覚は悲しいかな未だ不十分だ。

初恋の来た道、その彼方には、急激で苛烈な経済成長優先主義と環境破壊への過程が待ち受けている。それは嘗(かつ)ての日本の辿った道であり、現代中国の進行形の道でもある。中国を一方的に非難できないもどかしさ、恋心の記憶。

ラストシーンの基本として、ハッピーエンドならば、主人公が画面に向かって歩んで来ると聞いている。アン・ハッピーエンドならば画面に背を向けて遠ざかって行くと聞いている。華のある演出を目指すのなら、可憐な女の笑顔で終わらせた筈だ。ラストシーンの女は、儚(はかな)い足取りで、画面のムコウに遠ざかって行った。チャン・イーモウは瑞々しい恋愛映画の中に、文明の急激な変化を憂い、ラストシーンは神の視線にさえ成っている。

我々は 初恋の来た道 を戻る勇気はあるのだろうか

初恋の来た道 2000年 中国

(評価:★5)

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