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[コメント] セーラー服と機関銃(1981/日)

何これ、どこが面白くて「カ・イ・カ・ン!」なのか、俺たち小僧には判らなかった、ただ、薬師丸ひろ子の赤い口紅とハイヒールが眩しかった、81年の冬。 
いくけん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







最近、偶然深夜のテレビでやっていたのを、再鑑賞。なかなか凄い。

父親の裏面、ヤクザ社会の汚さ、SEXの生々しさと悦楽、真の悪人、無償の愛(風祭ゆきの佇まいの美しさ)、そして、大人の寂しさ。

これら全ての社会のもうひとつの真実を、アイドル映画を観に来た小僧たちに、さりげなく提示した。『セーラー服と機関銃』は、アイドル映画として、実に正しい。

それにしても、映画の中の薬師丸ひろ子、初登場のショットで『エクソシスト』の少女よろしくブリッジ、更にはクレーンで宙づりされて泥の中、ひどいじゃないですか。俺を含めた小僧たちに謝れ!(っていっても、俺は原田知世派なので被害は少なくすみました。笑)

劇中における、風情のある竿竹売りの声、涼やかな風鈴の音、そして執拗に繰り返し描かれる「よしず」越しの視線、これらは即座に溝口健二、ロング・テイクの代表作『残菊物語』を連想させる。相米慎二は映画内に於いて、速やかに、その声を撃ち払い、その音を破壊し、そのものを叩き斬る。ロング・テイクへの新しいアプローチ宣言。この映画では、その正体は未だ見えないが、奇妙な叙情性を湛えたロング・テイクの数々を観ることが出来る。

唐突に出現する異国調の海原(寺山修司の『上海異人娼館』を想起させる)、そして、ラストの事務所に流れる映画。薬師丸ひろ子はそののっぺりとした映画に向かって機関銃を乱射する。その意図する処は、日本映画に、同時にロング・テイクの技法には、未だ無限の可能性があるのじゃないか!「カ・イ・カ・ン!」って叫んでいるのは、薬師丸への上記のオイタを含めて、相米慎二監督自身であると確信する。

そんな考えを持ちました。そして俺は、エロな「上海異人娼館」を観ている(笑)、その他もろもろを含めて、違いのわかるイケナイ?大人に成りました。YOUたち。何てね。○(ま〜る)。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)週一本 赤い戦車[*] 水那岐[*] Myurakz[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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