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[コメント] 猿の惑星(1968/米)

不世出の天才脚本家、ロッド・サーリングが見事な映画を残してくれたこと。
ペンクロフ

この映画の原作は、正直言ってつまらない。サルにたとえて人種を風刺しただけの、底の浅い小説だったと記憶している。

この映画の面白さの90%は、共同脚本の一人であるロッド・サーリングに負うものだとオレは(勝手に)思っている。サーリングはテレビの「ミステリーゾーン」(原題 Twilight Zone)を創造した脚本家だ。30分のSFアンソロジーであるこの伝説的番組は、のちに直撃世代であるスピルバーグらによって『トワイライトゾーン 超次元の体験』としてリメイクされた。サーリングは「ミステリーゾーン」で番組ホストとして毎回出演し、ナレーションを語り、全156話中92話の脚本を書いた。未知への恐怖、社会への怒り、人間への愛に満ちたサーリングの作品に、オレはSFの何たるかを教わった気がする。

猿の惑星』の冒頭で、冷凍睡眠(コールド・スリープ)の失敗を、乗組員の一人がミイラ化している短い描写だけで済ませている。あっという間に宇宙船は水没し、計器はどえらい未来の年号を表示する。セリフなんか何もないけど、何が起こっているかが全部わかる。これは見事だ。この映画は、そんな見事な瞬間の連続である。

これは、ラストのオチだけで評価が高い映画ではない。ありもしない筈の「猿の惑星」の驚異の現実をまざまざと見せつけているからこそ、あのラストが語り草になっているのだ。『猿の惑星』はサーガになり、のちに4本の続編が作られることになるんだけど、4本の可能性は全てこの一作目の物語自体が内包している。サーリングは、本当に凄い仕事をしたと思う。

(評価:★5)

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