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[コメント] へレディタリー 継承(2018/米)

前半は不可解な作劇や不穏演出が凄まじく、イヤーンこれメッチャ怖いやーんと思っていたが、クライマックスはギャグ満載のコメディ映画のよう。「視点」がいかに恐怖という感情を形作っていくかという勉強になる。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
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オレだって前半1時間くらいは怖がっていたのだ。なにしろ才気ある演出が光っているし、ただならぬ雰囲気だったし。

しかしオカンがダンナと息子に「降霊しようぜ!」と言い出したあたりから、オレはダンナが気の毒になってきたのだ。そもそもご都合のよろしすぎるブラックボックスたる亡き祖母だって、オカンのオカンなわけだ。つまり呪い的なアレはオカン一族の血統に継承されているものだ。真面目だけがとりえで平凡な人生を送るはずだったこのダンナが、こんなイカれた女と結婚してしまったためにとんでもなく酷い目に遭うわけですね。これは気の毒だよな。大災難PTAだよな爆笑だよな。ということでこれ以降、今作はオレにとってギャグ映画になる。この映画のネタが悪魔崇拝のようだと判った途端、悪魔教信者の皆さんの裏方の苦労を思い、バックステージもののスラップスティック映画となる。オレの「視点」が変化したために、恐怖映画の恐怖が機能しなくなるのだ。ま、そもそも日本人のわたくしにとって悪魔とかそんな怖くないしな。キリスト教も信じてねえしな。

冴えていた頃の松本人志が、テレビ番組「ごっつええ感じ」でやっていたあるコントを思い出す。悪魔(松本)が今田耕司のもとに召喚される。悪魔は今田の願いを叶えてやるというが、それには条件がある。

松本「その引き換えに、お前の命をいささくじぇい!(噛む)」

今田はこの噛んだ台詞を聞き逃さない。

今田「え? なんて? いま何て言いましたん? いささく? いささくじぇい? いささくて何ですのん? いささく? お前の命を、いささくじぇい! 兄さんいささくってなんですのん? いささくじぇい言われましても困りまんがな」

悪魔(松本)は完全にやる気を失って、

松本「(小声)いただくぜ−言おうとしたんやん…」

今田「ほな言うたらよろしいやん。なんですのん、いささくじぇーて。いささくじぇー言われましても。いささくじぇーて。いささくじぇーて何しますのん。いささくじぇーて君。ほなー思う存分、いささいてもらいまひょかププー」

へレディタリー 継承』はオレにとってこのような印象を残す映画だった。でもこの新人監督は力量あると思うので、これからも頑張っていただきたいのである。

(評価:★3)

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