コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ドライブ・マイ・カー(2021/日)

3時間まったく退屈しない、実力者のねちっこいグラウンドレスリングのような映画で見事。しかし我々はずいぶん繊細に、弱くなっちゃったなーとも思う。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







終盤で西島秀俊が「謝りたい、僕が強くなかったことを」みたいなことを言う。申し訳ないんだけど、あーそうだよその通りだよ、お前は弱えよ気合いが足りねえよと思ってしまった。ハッキリ言って主人公が西島じゃなくてアニマル浜口だったら、そもそもこんな映画は作られないのである。まあ浜さんとこは奥さんも娘さんもお元気で何よりなんですが、食えるか食えないかを雑に生きた昭和の男は、あんまりこういう繊細なとこを掘りさげて内省しない。

強さの意味が、時代とともに変わったんだなあと感じる。いまどきは浜さんなんかすっかり珍獣扱いで、自分の弱さに向かいあう西島の方が強いとされるよな。でもそれってインテリや芸術家にとっての強さじゃねえの、とも思うのだ。みっともない話だけど、ぼかー西島夫婦の高級マンションとか代官山オシャレファックで気に喰わなかったねえ。食うのに困ってねえ人の苦しみ、お悩みではあるんだよな。

そこへいくとなかなか壮絶な生い立ちの三浦透子には、浜さん的な昭和の強さを期待したかった。いろいろあったけど、ま、どーってことねえよ、と言ってほしい。死んじまったもんはしょーがねえだろう? 死んじまったもんはさー、とカマしてほしかった。西島くん淋しいんやろ犬でも飼えよ、犬可愛いぞと言ってほしかった。すると三浦透子、エピローグで犬飼ってる。3時間出ずっぱりのマイカーが、数秒しか出てないマイドッグに負けたのだ。いやそういう話ではないか。そういう話ではないな。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人) けにろん[*] ジェリー[*] おーい粗茶[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。