自衛隊員たちは全然自衛隊らしくなく、現代（当時）の迷える若者たちとして描いている。長髪で態度悪くてだらしない。鈴木ヒロミツはゲイの役ですよね。そんな中で突出して態度悪い狂犬渡瀬恒彦は、安保引きずったクーデター自衛官という前年の『皇帝のいない八月』まんまの役柄。そんな渡瀬でさえ、千葉真一の狂気の前では噛ませ犬だ。渡瀬が前座を務め、メインで千葉ちゃんが暴れる。

夏木勲（夏八木勲）との海辺のイチャイチャは『ロッキー3』（1982）みたいだ。そもそも長尾景虎＝上杉謙信が男色だもんな。2人が各々の隊服と装束を交換して武芸を競う場面があるでしょう。『ロッキー3』でも、ロッキーはアポロの星条旗トランクスをはいて試合に挑むんですよ。マジでスタローンは『戦国自衛隊』を封切りで観たんじゃないか？　BLは国境を超えますな。

近代兵器の自衛隊が戦国時代の兵士たちに負ける合戦からは、ベトナム戦争の影響が見てとれる。裸の子供が死体の山を歩いてるのはベトナム戦争の裸で逃げる少女の有名な写真（1972）が元ネタだろう（それとも『激動の昭和史 沖縄決戦』（1971）か？）。日本では学生運動も終わってて、平和と繁栄と娯楽を謳歌する若者たちの「後ろめたさ」が画面に見えるようだった。イヤ、そんなマジメな映画じゃねえか。だって千葉ちゃんが敵に追われて馬で疾走しながらワンカットの中で右、左と上体を傾けて地面から弓と矢をビシバシ拾う凄いアクションを見て、ウヒョーって声をあげちゃったもんな。ウヒョーとか言いながら観るのが正しい映画ですね。