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[コメント] 宇宙大戦争(1959/日)

未だかつて、誰ひとり、観たことがない映画
ペンクロフ

この映画、冒頭から凄い。宇宙ステーションが、地球の軌道上に浮かんでいる。皆さん御存知のように、円形のステーションは回転することで遠心力を生み、内部に重力を生み出している。ステーションの内部が映る。その床は、ステーションの構造に従って湾曲している。

 キューブリックの『2001年宇宙の旅』は徹底した科学考証によって未来を描き、語り草になった。あの映画にも、回転する宇宙ステーションが出てきた。やはり床は湾曲していた。

この映画のクライマックスは、遊星ナタールの円盤軍と地球軍のロケット隊が広大な宇宙空間で延々と繰り広げる戦闘である。宇宙を飛び交う円盤の編隊とロケットの編隊が、鮮やかな光線で攻撃しあう。そのスピード感、攻撃の激しさ、光線の美しさ! 無限の宇宙を縦横無尽に駆け巡る、見たこともない宇宙戦争。こんなイメージを本気で映像化しようとした作品は、この映画以後、『スター・ウォーズ』の登場まで待たねばならない。

さて地球軍の防衛線を突破したナタールの大型円盤は、都市の上から反重力光線で攻撃してくる。そしてこれが、単純な都市破壊の図ではないのだ。光線を浴びたすべての建造物は、反重力により瓦解すると同時に上空へと巻き上げられていく。おびただしいビルも瓦礫も、車も、恐怖に叫ぶ人々も、天空へ舞い上がってゆく。斯様な破天荒なイメージを、オレは他の映画で見たことがない。これに似た試みすら思い浮かばない。格段に技術が進んだ現代のハリウッド映画でも、こんなムチャクチャを映像化することは困難なのではないか。いや、しかし技術以前に、まずこんなことを誰も「思いつかない」のではないか? 圧倒的な想像力の奔流…『宇宙大戦争』が描いた1965年を、人類はついに経験することなく21世紀を迎えた。これは間違いなく、未だかつて、誰ひとり、観たことがない映画だったんだ。

最後に、ちょっとオレ自作の年表を見てください。

1954年 『ゴジラ

1959年 『宇宙大戦争

1968年 『2001年宇宙の旅

1977年 『スター・ウォーズ

どうか時間をかけて、じっくりと年表を見てください。各作品の間に、どれだけ年月の開きがあるかも見てくださいね。『宇宙大戦争』という映画の凄さ、そして円谷英二が特撮による映像表現で、掛け値なしに世界の頂点に立ち続けていたのだということを実感していただければ、それだけでオレはもう、ホントにありがたい。

(評価:★5)

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