コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] グリーン・デスティニー(2000/米=中国)

「見たて」の心を失うな!
ペンクロフ

この映画で武術指導というか、功夫やチャンバラやワイヤーアクションの振り付けを担当したユエン・ウーピンという天才のおかげで見たことのないアクションを見ることが出来た。目線のぼけたダメ脚本でも、アクションの美しさのみで5点です。ズバリ言って、ウーピンが監督してくれた方が全然良かったよ! アン・リーより明らかにウーピンのほうがこの映画に貢献してるもんなあ。シネスケの映画スタッフの項目に「武術指導」がないのが、仕方がないけど残念です。

あのワイヤーアクションを不自然だと言う人は多い。でも中国武侠小説を読んだことがあれば、まったく不思議はない。あれは「軽功」といって、中国武術の達人は身を軽くして高く跳躍したり、凄い速さで疾駆したりできるんです。ホントにできるんだよ! だって小説だし。 あれを不自然と言うなら、日本の忍者もの・武芸ものにもずいぶんとんでもない描写があるぜ。

大半の功夫映画や、怪獣映画などの「この世にないものを描く」映画を観るという行為は、観る者の「見たて」の心を試される瞬間でもあるといえる。本物のトカゲに背びれをくっつけただけのシロモノが平気で「恐竜」として登場するのが映画の世界。「トカゲやん」というミもフタもない言葉をグッとこらえて、それを巨大な恐竜に「見たて」て映画の世界に遊べるか否か? さらに1歩進んで、背びれをつけられたトカゲの姿に侘びさびをも見い出せるか否か? このへんに人間のスケールというものが出てしまうのではないか・・・とワタクシは思っております。

極論すれば映画は全て「見たて」で成り立っている。役者が役を演じてることを知りつつ受け入れて、「つくり話」にちゃんと感情移入しつつ映画を観るという行為。作り手と受け手がグルになって、美しき共犯関係を作っておるわけです。

この映画のワイヤーアクションの技術と殺陣(武術指導)は、ズバリ言って世界最高峰ですよ。 (ミシェール・ヨーチャン・ツィイーの二回戦、ミシェールの最初の一太刀がいきなりフェイント攻撃! ツィイー、戦慄!の瞬間など、鳥肌が立つほど素晴らしい殺陣だった) こんなに美しいものを見ても「吊ってるやん」と言えちゃう人たちが多いというのは、オレにとってはちょっとしたショックだった。どう見ても跳んでるんだけどなあ。言わぬが華のツッコミはいれずに、無からありもしない美を生み出したウーピンをたたえる人間でありたいね。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (36 人)ぽんた[*] アブサン Santa Monica dappene[*] IN4MATION[*] 空イグアナ[*] ハム[*] ゼロゼロUFO[*] evergreen[*] Yasu[*] shaw[*] BRAVO30000W![*] ごう イライザー7 ミルテ[*] mfjt[*] kenjiban[*] m[*] ゆーこ and One thing[*] washout[*] 東京シャタデーナイト GET[*] Walden[*] さいた tomcot ぱーこ[*] peacefullife[*] kiona[*] movableinferno[*] トシ[*] ジョー・チップ くたー ina はしぼそがらす[*] アルシュ[*] [*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。