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[コメント] 戦場の小さな天使たち(1987/英)

こどものせかい
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







子供の視点から描く戦時下の英国。日本では戦争といえば悲惨、戦時下といえば困窮で、なにしろ暗い作品が多いものだがこれは全然違っていた。空襲や焼け跡の非日常にワクワクしてしまうガキンチョの感性を率直に描いており、たいへん好感が持てる。

なにしろ主人公のガキンチョからしてみれば空襲警報なんてスリル満点、焼け跡の廃墟で遊ぶなんて超面白い。田舎に行ったら行ったで悠々と流れる美しい河があって、舟遊びも楽しい。愛すべき人々であるガキンチョの家族の描写も丁寧で、特にジジイなんかたまらない魅力がある。ナレーションにもあるように、まさに人生最良の美しい日々が描かれる。

勿論、戦争なんだから銃後にも悲惨はある。空襲で死ぬ人もいる。面白かったのは、クソガキ団と愉快な廃墟荒らしをしていた主人公の家がたまたまの火事で焼けてしまった話だ。翌日には、早速クソガキどもがやってきて主人公の家で大暴れ。それを見た主人公の少年、思わず怒りの鉄拳をダチンコに爆発させるのだけど、これとてあくまでガキンチョ同士の他愛もないケンカとして描かれている。この荒らす/荒らされるの立場の入れ替わりなんて我々観客にとってはたいへん味わい深いテーマを含むエピソードのひとつなんだけど、なにしろガキどもは難しいことを考えない。連中にとっては毎日がドキドキの冒険で、遊ぶのに忙しい。それは、なんと素晴らしいことだろうか。素敵なことだろうか。

戦争でひどい目に遭った人や、映画は戦争の悲惨さを表現すべきと考える人には、ずいぶん神経を逆なでにするギャグ満載のひどいコメディ映画かもしれない。文句も多かろうと思うし、オレにしたって戦勝国は気楽なもんだよなーとイヤミのひとつも言いたい気分は少しある。しかしこの映画、実際に戦時下の英国少年だったジョン・ブアマン監督の自伝的な意味あいの強い作品と聞く。当事者が「だって実際こうだったんだ」とこういう映画を作ったのなら否定のしようもないし、たとえ戦争といえども大きな悲劇だけで世界が一色に塗りつぶされるわけでもあるまいと思う。

映画のラストカットは、ド田舎をゆったりと流れる河だ。主人公の少年期を美しく彩ってくれたあの河は、戦争があろうとあるまいと関係なく、100年前にも1000年前にも同じ風景の中を流れていたであろう河だ。だからなんだと言うわけじゃあないが、あの河を見て、いろいろ大丈夫だとオレには思えたんだ。すげえいい映画だと思います。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ジョー・チップ[*] ゑぎ[*]

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