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[コメント] TOKYO!(2008/仏=日=韓国=独)

自分探しをテーマにしても、まだ新しい映画を撮れるんだという現在進行形!
SUM

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







1.インテリア・デザイン ゴンドリーさんは初挑戦です。見ていて「楽しむ」という意味では一番語り口がなめらか。地方からTOKYOに出てくると言うところと、彼氏や友人との関係の中で、自分なりに頑張っているのに「自分って」という喪失感、心の穴が突然「体の穴」という形で現れ、そして肉体の喪失へと至るのだが、それが実は自分の存在意義へ転化するというあたり、言葉で語ればオリジナルとは言い切れないかも知れないが、これだけのリアリティと語り口で見せられるのはまさに監督の才能という他ないだろう。

2.メルド カラックスの新作待ってました。テーマ性とナンセンスさを両立させたという意味では実は『大日本人』なんかと通じる所があるかもしれない。しかし、見応えは格の差を感じてしまう。 突然現れた地下道の怪物、最初は、これはただのナンセンス。ゴジラのパロディ。首都を襲う怪物だが、いかにもスケールが小さい。ただの小さい物語かと思ったら手榴弾が現れて、裁判ネタまで広げていく。人種や死刑の問題を絡めているのは間違いないので、それが主張ではまったくないということはさすがにあるまいが、声高に叫ぶわけではなくパロディの範疇に納めている所が見事だろう。 何故かフランス人にメルドの言葉を喋る人間が現れる所なんかやりすぎだろうと思うわけだが、次の展開を読ませないで都会と現代におけるアイデンティティについてパロディやりきるカラックス。またも次回作から目が離せない。

3.シェイキング東京 ポン・ジュノ、またしても待っていました。まだまだ発想が枯れない。ひきこもりをテーマにしていて、ひきこもりから社会への出発を見事に描いているのだが、実は結局蒼井優という、いかにも偶像な女性への憧れから始まってLoveボタンというオチで終わってしまう辺りはオタク心をくすぐるマスターベーションであって、ツボにはまってしまった時点で自分は負けだろうと思ってしまうのだが、この皮肉な物語の構造は見事だと絶賛したい。

一昔前、ずいぶん自分探しをテーマにした映像作品が流行って食傷気味だった時期があったが、同じアイデンティティ映画でもこういう映画が作れるというのは、映画に未来を感じられるよね。ブラボー。

(評価:★5)

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